熟練タクシー運転手が
「近距離客を嫌がるドライバー」に放った苦言

 20年以上、東京都の港区・千代田区・中央区を中心に走り続けているベテランドライバーがいる。彼は「東京ではこの3区だけ抑えておけば、飯が食える」と言い切る。

 このドライバーは乗客を降ろすたびに、次をどこで拾うかが頭の中にある。上記3区から離れすぎないよう、客の需要を見極めて「降ろす場所」を選んでいる。「遠距離の客を乗せても、降車地点が営業できないエリアであれば、むしろ短距離の乗客がいい」と言い張るくらいだ。

 逆に稼げないドライバーに多いのが、遠距離の一発を狙って「都心から離れすぎる」パターンだ。神奈川や千葉まで行って、帰りの高速代と空走時間を使い果たし、トータルで見ればマイナスだった。そのような話は決して珍しくない。「大きな稼ぎ」を得ることに目が行きすぎて、時間当たりの効率を見失っているのだ。

 また、ある高収入ドライバーはこう言った。「近距離が嫌なのは、降ろした後の算段がない人。俺は乗せた瞬間から、次をどこで拾うかを考えている」。筆者はこの一言が、稼ぐドライバーと稼げないドライバーの差をよく表している気がした。“近距離嫌い”は、気持ちの問題ではなく、スキルの問題だというのだ。

 実際、稼ぐドライバーは乗車距離そのものよりも、待機時間の長さや空車時間の方を気にしている。そしてもちろん、近距離乗車のお客にも態度を変えない。当たり前のことに聞こえるが、これを毎日続けられるかどうかが、長い目で見ると収入の差になって出てくるのだ。

 タクシーの営業に限らず、目先の利益だけでなく、その先のつながりを考える姿勢は多くの仕事に通じるのかもしれない。

 これらの事実を踏まえると、近距離を移動したいお客は「付け待ち」ではなく「流し」のタクシーを拾った方が良いかもしれない。優秀なドライバーに出会って、嫌な思いをせずに済む可能性が高いからだ。

 なかなか流しのタクシーを拾えないときは、配車アプリで予約し、事前に行き先を伝えるのも手だ。あらかじめ降車地を知らせておけば、一発狙いのドライバーに淡い期待を抱かせることもないだろう。