平野 配当金などの利益還元については、株主重視が進んだと思います。でも、株主総会は違います。私は昭和の時代の「シャンシャン総会」は体験していないのですが、台本通りに進む総会をそう呼ぶのなら、今でも「シャンシャン総会」と呼んでいいでしょう。

 というのも、株主総会での質疑応答で議案の賛否がひっくり返ることはなく、実は始まる前に「事前の議決権行使」で、結果はすでに決まっているからです。総会は、それを確認するだけの「通過儀礼」になっています。

――つまり、ある種の茶番だと?

平野 一番の茶番は会場での「拍手による採決」です。議長が「賛成の方は拍手をお願いします」と言って拍手で決まったように見せますよね。でも、実際は事前の投票で決まっています。

 誤解してほしくないのは、私は議案の賛否が大株主等の議決権行使で総会前に決まってしまっていても仕方がないと考えています。それを隠し、質疑を避け、拍手で決めているように見せかけ、「拍手多数」を採決理由にしているのが問題だと思うのです。

――確かに、拍手している人数を数えたり、まして音量を測定したりしているのは見たことがありません。どんなにまばらな拍手でも「賛成多数とみなします」と言って可決してしまいますよね。

平野 私が体験した例だと、リートですが森ヒルズリートの総会です。株主からの動議に対して明らかに会場の過半数が賛成の拍手をしていたように見えました。でも、「否決」されました。会社に理由を聞くと、「会場にいる大株主(森ビル)が拍手をしていないのを、目視で確認したから」というのです。合法とはいえ、私たち個人株主の拍手なんてまともに数える気がないのが現実です。

日産の高額役員報酬に関する
質問への不誠実な回答とは

――企業は総会で、個人株主のことをどう見ているんでしょうか?

平野 「知識が乏しく、自分勝手な人たち」という前提で扱われていると感じます。会社側はとにかく波風を立てずに、時間通りに総会を終わらせたいのが本音です。

 その証拠に、会社にとって都合の悪い質問が出ると、あからさまに軽視した対応をします。例えば、日産自動車の総会です。株主が「役員報酬が高すぎるのでは?」と質問しました。会社は「高いか、高くないか」を答えるべきですよね。ところが、会社側は「報酬の計算式はどうなっているか」という社内ルールを延々と説明して時間を潰し、肝心の質問には答えませんでした。しかも、株主が「質問に答えていない!」とツッコミを入れたくても、一度質問するとマイクを取り上げられて席に戻されるルールなので、追加の質問ができませんでした。

 経営責任の追及では、大赤字で工場閉鎖にまで追い込んだ前社長の内田誠氏の責任を問う質問で、「内田さんが答えて」という指名が何度も出ました。でも、内田氏本人は総会の壇上にいたのに、議長は頑なに発言させませんでした。

 再三再四の要請にもかかわらず、正当な理由もなく内田さんに発言機会を与えない議事進行が、先ほど述べた今年の日産の総会で議長交代を提案する理由の1つです。

――提案といえば、来年の法改正では「議決権を300個(3万株)以上持っていないと株主提案ができない」ようにルールを変えようとする動きもあるようですが。確かに過去に野村ホールディングスに「野菜ホールディングスに社名を変えろ」とか「トイレを和式にして足腰を鍛えろ」とか提案があり話題になりましたよね。

平野 個人株主の権利を制限する改正案で大反対です。会社側は「変な嫌がらせの提案を減らしたい」と言います。確かに意味がないと思われる株主提案はありますが、それはごく一部です。それで多数の個人株主の権利を奪うのは会社側に都合がよすぎます。

 私としては、「提案や質問をするときは、匿名ではなく本名を名乗る」というルールにすればいいと思っています。本名を名乗らせれば、自分の立場が悪くなるような変な質問は自然となくなると思います。

丸井やリョーサンは
総会で「信用できる」と感じた

――最後に、これから株主総会に行ってみたいけれど、難しそうで気後れしている初心者の方へアドバイスをお願いします。

平野 まずは「社会科見学」のような気分で、気軽に行ってみてください。無理に質問する必要はありません。他の株主がどんな質問をしているのかを聞いて、「自分ならこんなことを聞いてみたいな」と考えるだけで十分勉強になります。何よりも、総会に行くことは投資にすごく役立ちます。経営者の「生の声」を聞くことで、「この社長は信用できるな」と肌で感じることができるからです。

――実際に総会へ行ったことが投資に役立った例はありますか?

平野 例えば、リョーサン(現・リョーサン菱洋ホールディングス)や丸井の総会では社長は、自身の言葉でとても丁寧に質問に答えてくれました。質問を打ち切らず、全部自分で答えていました。そうやって株主と誠実に向き合う社長の会社の株は、保有を継続した結果、株価も上がり配当も増えました。

 台本通りの総会だったとしても、リアルな総会の場に行くと社長の人柄や会社の体質がよくわかります。ぜひ一度、ご自身の目で投資先の会社を見極めに行ってみてほしいです。

本記事は2026年6月16日時点で知りうる情報を元に作成しております。本記事、本記事に登場する情報元を利用してのいかなる損害等について出版社、取材・制作協力者は一切の責任を負いません。投資は自己責任において行ってください。