「成果を上げられないときに、自分の組織をどう捉えていましたか?」

 これは、問題に関して、視野が広がる人か、狭まる人かを浮き彫りにさせるための、いわば“カマをかける質問”だったのだ。

「だからあいつは駄目なんだ」

「そもそも自覚が足りない」

 と部下の人格や能力を評する一方で、自分の失敗は、

「前任者の責任」

「為替や競合などの外部要因の悪化」

 など、取り巻く環境のせいにする。

 心理学では、この傾向を「帰属のゆがみ」と呼ぶ。

 人は他人の失敗を見ると、その人の性格や能力に原因を求めやすい。

 一方、自分の失敗については環境や状況の影響を強調しやすい。

 誰にでも見られる傾向だが、管理職になる人にこの傾向が強いと問題が起きる。なぜなら、人が育たなくなるからだ。

 始末の悪いことに、ゆがみがある人物に限って、自信に満ち溢れ、話もうまく、見識があると見られ、「洞察力がある」「慧眼(けいがん)がある」と評価されがちなのだ。

「部下ガチャ思考」の上司が
組織を壊す

 私は、このような価値観を「部下ガチャ思考」と呼んでいる。

 どんな場面でも、

「人に恵まれなかった」

「駄目な部下を押し付けられた」

「全く最近の若者は」

 などと語り、自らを被害者のように位置付ける視点をいう。

 この「帰属のゆがみ」は、日常生活でも頻発している。

 子どもが勉強しないと「やる気がない」「約束を守れない」と嘆き、配偶者が忘れ物をすると「だらしがない」「何度言ったら分かるのか」とののしる。そんな人は珍しくない。

 元プロ野球監督の野村克也氏の言葉に、「勝ちに不思議の勝ちあり。負けに不思議の負けなし」というものがある。

 物事がうまく回らないときこそ、自分に都合の良いストーリーを描くことなく、視野の広さを持てることがリーダーには求められている。

 面接で見極めたいのは、能力だけではない。

 問題が起きたとき、その人の視野は広がるのか、それとも狭まるのか。

「問題が起こった時、それをどう捉えていましたか」

 この一問は、応募者を見抜く質問であると同時に、自分自身を映す鏡でもある。

※ストーリーは川野さんの指導経験に基づき、個人の特定を防ぐため一部脚色の上、再構成しています。