当時は仕事や家事に追われ、毎日を回すことで精いっぱいだったのだと思います。もちろん、それは言い訳にはなりません。けれど、親に余裕がない時ほど、子どもの小さな変化は見えにくくなります。

 特に共働きの家庭では、朝は登校準備に追われ、夕方以降は夕食、宿題、入浴、翌日の準備と、家の中が慌ただしく流れていきます。子どもと同じ空間にいても、親の意識は次の家事や仕事に向きがちです。

 だからこそ、家の中に「子どもの変化に気づける接点」を意識してつくることが大切です。

距離が近すぎる家では
子どもの本音が見えにくい

 例えば、リビング学習のように、いつも親の目が届く場所で子どもが過ごすのは、変化に気づく接点のひとつです。

 しかし、距離が近ければいいというわけではありません。

 家族が常に同じ空間にいると、子どもはひとりで気持ちを整理する時間を持ちにくくなります。また、自分だけの個室がなく、兄弟同室の場合、親だけでなく兄弟の目もあります。

 いじめられていることを知られたくない。親に心配をかけたくない。兄弟に、からかわれたくない。自分でも、どう言葉にすればよいかわからない――。そう感じている子どもほど、家族の前では普段通りを装うことがあります。

 子ども部屋がない、家族との距離が近すぎる、いつも誰かの目がある。そうした家では、子どもの本音がかえって見えにくくなることもあるのです。

距離が遠すぎる家でも
子どもの変化は届きにくい

 一方で、子ども部屋があれば安心というわけでもありません。成長とともに、ひとりの時間は必要になります。自分の部屋を持つことは、子どもが自立していくうえでも大切なことです。

 ただし、ドアを閉めると家族の気配がまったく届かない部屋になっている場合、親は子どもの変化に気づきにくくなります。

 部屋にこもる時間が急に増えた。食事以外はほとんど出てこない。声をかけても返事が短くなった。夜遅くまで明かりがついている。

 こうした変化を、単なる反抗期で片づけてしまうと、子どものサインを見落としてしまうことがあります。