工事費が仮に1.2倍に膨らんだら、修繕積立金は工事を支えきれるのかマンションの修繕工事費が仮に1.2倍に膨らんだら、修繕積立金は工事を支えきれるのか(写真はイメージです) Photo:PIXTA

在庫があっても届かない
建築資材「目詰まり」の構造

 マンションの修繕計画をめぐる前提が、大きく揺らいでいる。中東情勢を背景に長引くナフサ危機は、まず新築やリフォームのコスト上昇という形で表面化したが、その影響はマンションの大規模修繕工事の現場にも及んでいる。建材価格の高止まりが続く中、現場で使う資材の流通そのものが不安定になり、必要な部材をフリマアプリで入手した…という話まで聞こえてくるほどだ。

 工事費が仮に1.2倍に膨らんだら、修繕積立金は工事を支えきれるのか。即答できる管理組合は決して多くないが、最終的にその負担を背負うのは、マンションに暮らす一人ひとりの住民だ。大切な資産を守るために、私たちは何から手をつければよいのだろうか。

 そもそも、なぜこれほどまでに工事費の前提が揺らいでいるのか。鍵を握るのは、防水材、塗料、シーリング材といった大規模修繕に欠かせない資材の状況である。これらの資材はいずれもナフサを原料とする石油化学製品であるため、中東情勢の影響を正面から受けるのだ。ただし、国内から資材が完全に枯渇したわけではない。問題の本質は「ものがない」ことではなく、必要な現場に必要な量が「届かない」という、供給の目詰まりにある。

 例えば塗料は、マンションの外壁ごとに異なる色番号で製造されるため、もともと在庫が利きにくい。そこにナフサ危機による生産制約が重なり、発注しても必要な量の何割かしか届かないケースが発生しているのだ。

 とはいえ、メーカーだけを責めるわけにもいかない。生産が需要に追いつかない中、特定の取引先にまとめて出荷すれば他社への供給が止まるため、各社に少しずつ割り当てるしかないのが実情だからだ。そして資材を待つのは大規模修繕に限らず、新築もビル改修も同じ。限られた製品を業界全体で細々と分け合う状態が続いていることになる。