対象工事を厳選し
負担を減らす4つのポイント

 とはいえ、いざ「計画の見直し」となると、建築から設備まで全項目を洗い直す大がかりな作業を想像されるかもしれない。しかし、今回のような急激な変化への備えであれば、もう少し的を絞った見直しでも対応は可能だ。その際のポイントとして、次の4つが挙げられる。

(1)対象は「建築部分」に絞る
 設備まで含めて全項目を網羅しようとすると、作業量もコストも膨らんでしまう。大規模修繕工事に直結する防水や外壁などの建築部分に絞り込むだけでも、コストを抑えながら実効性のある見直しができる。

(2)更新の頻度は柔軟に
 計画の見直しは一般的に5年に1回が目安とされるが、状況が激しく動いている今、2~3年スパンで見直す選択肢も持っておきたい。計画は一度作ったら終わりではなく、物価の動きに合わせてその都度更新していくものという理解が重要だ。

(3)「据え置き」と「上昇リスク」を見越した2つの試算を行う
 当初予算のまま収まるケースだけでなく、例えば「1.2倍」まで膨らんだ場合など、2通りを試算し、それぞれのケースで積立金がいつ頃不足しそうかを把握しておくことが大切となる。

(4)工事項目ごとの取捨選択を事前に
「この工事は周期を少し延ばせるか」「足場が必要な工事はまとめられるか」など、項目ごとの優先順位を整理しておくだけでも、いざというときの選択肢は格段に広がる。

 こうしたシミュレーションを管理会社に一任すればよいかといえば、そうとも言い切れない。安全維持を最優先する立場上、基本的には従来の計画通り、あるいは早めの修繕を勧められるケースが多いからだ。物価高に合わせた時期の延長や仕様変更など、資金繰りに踏み込んだ調整は管理会社の定型業務には含まれない。どのリスクを許容しどう資金をやり繰りするか、その判断は資産と未来を守る管理組合自身の選択にかかっている。

 工事のタイミングも、マンションごとに一様ではない。劣化が進んでおらず雨漏りなどの心配が小さければ時期を待つ手もあるし、傷みが激しい箇所があれば部分的に先行させる判断もあり得る。資材の動向と建物の状態を冷静に見極めるには、管理会社とは利害関係のない、第三者に判断を仰ぐのも一案だろう。

 ナフサ危機に端を発する資材の混乱は、「うちはまだ先」と考えている管理組合にとっても、決して他人事ではなくなりつつある。過去に作った計画書をそのまま守るだけでなく、状況の変化に合わせて柔軟にアップデートしていく視点が不可欠になるだろう。まず建築部分だけでも、現在の物価に合わせた資金の再チェックを進めておきたい。その一歩こそが、将来的な借り入れのリスクを和らげ、マンションの財政と住民の暮らしを守る確かな備えにつながるはずだ。

(株式会社さくら事務所創業者・不動産コンサルタント 長嶋 修)

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