長期修繕計画のすべてを
見直す必要はない

 これまで多くの管理組合は、長期修繕計画に書かれた金額を信じ、計画通りに工事ができるものとして積立金を積み上げてきた。しかし、資材価格の上昇が続く大転換期のいま、その実直な取り組みだけでは追いつかない現実がある。

 例えば工事費が2割増し、つまり「1.2倍」に膨らんだとしよう。現在の資材価格の動きを踏まえれば、これは決して現実離れした数字ではない。しかし、現場を見ている私たちの実感として、このレベルのシミュレーションに危機感を持って着手している管理組合は驚くほど少ない。さらに一歩進んで、「どの工事を先送りできるか」「どこなら仕様を見直せるか」など、具体的な取捨選択の議論にまで踏み込んでいるマンションとなると、ごくわずかというのが実情だ。

 物件の規模によっても、直面する危機の性質は異なる。資材の手配という面だけで見れば、必要物量の少ない小規模マンションのほうが小回りは利きやすい。しかし、資金面に目を向けると形勢は逆転する。

 大規模マンションは全体の積立金の規模が大きいため、部材が多少値上がりしても手元の残高で吸収できる体力が残されていることが多い。一方で、50戸未満の小規模物件にはその余力がない。シーリング剤や塗料が1.1倍、1.2倍になるだけで、そのコストがダイレクトに組合財政に響いてくるからだ。もし5年以内に大規模修繕の時期を迎えるのなら、資金計画の再確認を早めに進めることをおすすめしたい。

 ナフサ危機がいずれ収束したとしても、一度上がった資材価格が元の水準までスムーズに下がるとは限らない。こうした高止まりの可能性をある程度頭に入れて計画を組んでおかなければ、いざ着工という段階で思わぬ資金不足を招きかねない。状況を直視せず、足りない分を安易に借入金で賄えば、当然そこに金利負担が上乗せされる。いま計画を見直す労力と、将来支払うことになる借入金利。どちらが組合員にとって賢い選択かは、比べるまでもないはずだ。