この滞りに、心理的な悪循環も重なる。1970年代のオイルショックでは、先行きの不安からトイレットペーパーの買い占めが広がり、不足がさらなる不足を呼ぶ事態となった。同じ構造がいま建設資材の世界でも生まれ、冒頭のフリマアプリでの調達や、転売目的の買い占め、現場での盗難の話まで聞こえてくるなど、業界全体に混乱が広まっているのだ。
さらに「目詰まり」は、施工会社の経営にも影響を及ぼす。工事を完了させなければ最終的な代金は入らず、届いた資材だけで工程をパズルのようにつなぎ、持ちこたえている現場が少なくない。物量の多い大規模物件ほど苦戦は続いており、この状態が長引けば、経営に黄信号が灯る会社が出てきてもおかしくはないだろう。そして施工会社の苦境は、管理組合との契約交渉の場にも現れ始めている。
「秋の着工」を急ぐ施工会社の事情
早期契約に潜むリスク
具体的には、施工会社側から「なんとか秋には着工させてほしい」と前倒しを求められるケースだ。最近、このような打診を受ける管理組合も増えてきている。既存の現場が長引いて入金が滞る施工会社にとって、新たな契約の着工金は、手元の資金を回すためにどうしても確保したいのが実情だ。施工会社側の切実な事情は理解できるが、資材の見通しが立たないまま契約を急ぐのは避けたほうが賢明だ。十分な見通しのない契約は、結果として管理組合側がリスクを背負うことになりかねない。
仮に資材不足によって工期が延びれば、足場の維持費や現場管理費などの超過費用が発生する。さらに、契約後に資材価格が一段と上昇するリスクも考えられる。こうした事態に備え、超過費用の負担割合をあらかじめ明文化しておくことや、資材価格の動きに応じて金額を見直せる「スライド条項」の有無を確認しておくことが欠かせない。特にスライド条項は、民間工事の標準的な契約では当初から盛り込まれていないことが多いため、交渉段階での協議が必要になる。
さらに、施工会社の倒産リスクも頭に入れておきたい。工事中や、引き渡し後のアフター保証の期間中に倒産してしまえば、本来受けられるはずのアフター補修対応は望めなくなる。「大手なら安心」とも言い切れず、規模の大きな会社は経費がかさみ見積もり自体が高くなりやすい。かといって、規模が小さすぎる会社には財務面の懸念が残る。マンションの規模に見合った施工会社を選び、財務状況を見極めたうえで、瑕疵(かし)保険の活用なども検討したい。
もっとも、こうした契約の工夫や関係づくりも、すべては必要な原資があって初めて成り立つ話だ。肝心の修繕積立金そのものが不足していれば、そもそも工事を進めることはできない。どれほど良好な関係を築いたとしても、これでは工事のスタートラインにすら立てないのだ。







