子どもを抱きしめる母親写真はイメージです Photo:PIXTA

東京都の合計特殊出生率は全国で最も低く、「東京こそ少子化の元凶」とみなされることも少なくない。しかし、その数字だけで結論を出すのは早計だ。都道府県別の出生率には人口移動による“見かけ上の低さ”が含まれており、データを丁寧に読み解くと、東京はむしろ結婚や出産を支える重要な役割を果たしている可能性が見えてくる。経済学者の小峰隆夫氏が、少子化をめぐる「東京悪玉論」の盲点を解き明かす。※本稿は、経済学者の小峰隆夫『地域と人口減少の経済学 スマート・シュリンクという選択肢』(中央公論新社)の一部を抜粋・編集したものです。

そもそも合計特殊出生率は
どのように算出されるのか?

 東京の出生率が低いことは事実である。2024年の出生率を見ると、全国平均では1.15だが、東京は0.96で都道府県中最も低い。ただし、この「東京の出生率は全国で最も低い」という点については注意が必要である。「実はそれほど低くない」という議論もあるからだ。それはこういうことである。

 まず、そもそも合計特殊出生率はどうやって計算するのかを押さえておこう。合計特殊出生率というのは1人の女性が一生の間に平均何人の子どもを産むかを示すものだと説明される。しかし、よく考えてみると、2024年の時点で日本に存在する女性が一生の間に何人子どもを産むのか、どうして分かるのだろうか。これから子どもを産むであろう人も多いのだから、そうした人たちがこれから何人子どもを産むかは分からないのではないか。

 では、実際の合計特殊出生率はどうやって計算されているのか。2024年を例として考えてみよう。まず、15~19歳の女性が2024年に平均何人の子どもを産んだかという平均出生率は0.0082である。