「東京一極集中が日本の少子化を招いている」――。昨今、よく耳にする言説は本当だろうか? データに基づいて反論したい。(イトモス研究所所長 小倉健一)
島根県知事が「東京一極集中」に怒り露わ
「子育て世代と言われる年代の方々が、一番集積している地域が日本で一番出生率が低いということは、出生率を引き下げる要因になってる。明らかです、算数的に言って」
「これは、数学じゃなくて算数のレベルだと思う。カイロ大学を首席で卒業されている小池都知事が、分からないわけがない。私は、分かっているけど分からないフリをしてるんじゃないかと思う。それは自分にとって都合が悪いから」
島根県の丸山達也知事が8月8日の定例記者会見でこう発言した。
火種になったのは、1週間前の8月1日に福井県で開催された、全国知事会での人口減少をめぐる議論。東京をはじめとする都市部への人口集中を問題視する地方の知事と、それに反発する東京都の小池百合子との間で意見が対立した。冒頭の丸山知事の発言は、この流れを受けてのものだ。
丸山氏が知事を務める島根県は、2023年の時点で県全体の人口は64万9235人であり、前年から8607人減少している。少子高齢化の進行に加え、若年層の人口流出も要因だ。
出生数と死亡数の差を示す「自然動態」を見ると、4012人の出生があった一方で、死亡者数は1万578人に達し、6566人の自然減だった。さらに、他地域からの転入と、他地域への転出の差を示す「社会動態」は、2041人の転出超過となっている。
とりわけ15〜64歳の生産年齢人口の減少が顕著であり、特に25〜29歳、35〜39歳の層で転出が増加している。これらの層が他地域に移住する主な理由は「転職・転業」であり、島根県内での雇用機会の不足が大きく影響しているものとみられる。
こうした状況を踏まえて、丸山知事は東京都への怒りを露わにしたわけだが、安芸高田市長だった石丸伸二氏も都知事選の際に同じような主張をしている。彼らは「東京一極集中」に歯止めをかけることが、地方にとってプラスになると考えているようだ。
果たして、丸山知事の言っていることは正しいのか? ファクトをもとに検証してみよう。