ちなみに、同資料によると、結婚している女性が産む子どもの数(有配偶出生率、ここでは有配偶女性1000人に対する子どもの数)は、2020年で全国平均が72.9であるのに対して、東京都は74.9である。むしろ東京のほうが高い。

東京で出会ったカップルが
郊外に移り住んだだけ

 東京都だけを見るのではなく、首都圏の周辺県も含めて考えるべきだという議論がある。

 以下は、日本大学の中川雅之教授が、日本経済研究センター「大都市研究会」報告第4章「東京は「日本の結婚」に貢献」(2015年7月)で詳しく述べていることなのだが、筆者なりに要約する。

 前述のように、出生率を都道府県別に比較すると、東京が最も低いことは間違いない。さて、このように出生率が低い理由としては二つが考えられる。一つは、女性の有配偶率が低い(つまり未婚率が高い)ことであり、もう一つは有配偶出生率が低い(つまり結婚した後産む子どもの数が少ない)ことである。

 では東京の低出生率の原因はどちらなのか。図4‐2を見ると、有配偶出生率は全国並みなのだが、有配偶率が極端に低いことが分かる。すなわち、未婚女性が多いことが東京の出生率が低い原因なのである。

図4-2 都道府県別に見た出生率、有配偶率、有配偶出生率同書より転載 拡大画像表示

 ではなぜ東京の未婚率は高いのだろうか。この点について中川教授は、結婚に関する地域選択モデルを提示する。このモデルによると、人々はまず東京で結婚相手を探す。東京は多くの人が集まり、強いマッチング機能を果たす場所だからだ。

 結婚相手が見つかると、次にどこに居住するかだが、ここで郊外が選択される。東京は居住・生活コストが高いからだ。すると、結果的に東京に未婚者が集中し、郊外に結婚カップルが集中することになる。

 このモデルは現実にもほぼ当てはまる。詳しいデータは省略するが、女性の婚姻率を年齢別に見ると、東京都は20代以降未婚率が高い状態が続くが、東京周辺部では30代以降婚姻率は全国平均より高い状態となる。これは、東京でマッチングに成功した女性が郊外に移住していることを示している。

 なお、東京だけでなく日本全体としても、少子化が進展している原因は、有配偶出生率の低下ではなく有配偶率の低下である。すると、「いかに結婚を増やすか」が少子化対策の鍵を握る。その点で、東京は効率的にマッチング機能を発揮して、その結果生まれたカップルを周辺地域に供給している。東京は少子化の原因ではなく、少子化に歯止めをかける役割を果たしているとさえ言えよう。