
ニキビ治療、二重整形、ほくろ取りまで「0円」――。本来は安価とはいえない美容施術を負担なく受けられるかのように見せて利用者を集め、来院後に有料コースや高額な施術を提案する広告が横行している。低価格広告から100万円前後の契約と即日施術へ進み、返金紛争となった例もある。特集『狂乱の美容医療 膨張市場の「闇」と錬金術』の#7で、利用者の悩みを収益へ換え、診療と営業を一体化させて高額契約へ導く美容医療ビジネスの病巣に迫る。(ジャーナリスト 星 良孝)
ニキビ治療や二重整形も「0円」!?
七大クリニックの一角で何が起きているのか
ニキビ治療、ボツリヌストキシン注射、二重整形、ほくろ取り。これらの美容施術を「0円」で受けられるかのように訴える広告が横行し、2026年夏時点でも複数展開されている。
広告主は、全国に院を展開するTCB東京中央美容外科だ。本特集#1で、急速に規模を拡大した「七大クリニック」の一つとして取り上げた。
「ニキビ治療が通常9800円のところ『限定0円』」「クマ取り再生注射が通常9800円から『0円』」「脂肪溶解注射が1万9800円から『初回0円』」「ほくろ取りが5個まで2万4900円から『0円』」――。SNS上では、TCB名義のそんな広告があふれている。
Meta広告ライブラリの出稿データを分析すると、ニキビ治療、クマ取り再生注射、脂肪溶解注射、ほくろ取り、シミや肝斑の治療など、異なる悩みを入り口に「0円」を前面へ掲げ、無料カウンセリングやクーポンの利用へ誘導するTCB名義の広告群が確認できる。
適用条件や対象となる施術の範囲は細かく設定されており、これらの広告は25年5月から26年6月まで1年以上にわたって継続的に出稿されていた。広告のバリエーション数の推移を見ると、26年5月11日には単日最多となる59件を記録。0円をフックとした集客手法が一時的なものではなく、常態化したマーケティング手法として運用されていた実態が浮かび上がる(下図参照)。
こうした「0円」や極端な低価格を掲げた集客広告は、TCBに限らず他のクリニックからもSNSを中心に数多く出されている。
「条件をよく読まなかった人が悪い」「高額だと思えば断ればよい」「広告に引っかかった人が悪い」と片付けるだけで、同じ構図が業界で繰り返される理由まで説明できない。その背景には美容医療ならではの問題が潜在しているからだ。
次ページでは、0円で施術を受けるつもりで来院した人に、最大130万円のプランが示された実際の会話記録や事例をひもとく。0円から始まった相談がなぜ、その現実的な選択肢として100万円超の高額契約へとすり替わっていくのか。医療機関、カウンセラー、そして医師がどう結び付き、利用者を暗渠に突き落としているのか。美容医療ビジネスの闇とその中に潜む病巣に迫る。








