マジで厄介…「責任逃れの身勝手社員」が決まって口にするセリフ【マンガ】『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク

三田紀房の起業マンガ『マネーの拳』を題材に、ダイヤモンド・オンライン編集委員の岩本有平が起業や経営を解説する連載「マネーの拳で学ぶ起業経営リアル塾」。第69回では、買収計画に関する情報公開のタイミングについて解説する。

身勝手社員が言いがちな言葉

 大手商社・一ツ橋商事の井川泰子は、主人公・花岡拳が上場させた新興アパレルメーカー・T-BOXのTOB(株式公開買い付け)を画策し、T-BOXの古参メンバー3人を味方に引き入れた。

 だがその1人である片岩八重子(ヤエコ)は、花岡から「特許出願中の超極細ファスナーの取り付け技術の開発を任せたい」という熱い言葉を受けて、井川たちと決別する。

 ヤエコが自分たちから離れたことを知った一ツ橋商事の井川は、M&A担当の西田から、「ヤエコさんが反対に回ると、計画に狂いが生じてきます」と指摘を受ける。

  西田はすでにヤエコが協力関係にあり、彼女を中心とする生産システムを手中に収めるためにT-BOXを買収するとして、役員への事前報告をしていたからだ。

 焦る井川は、同じく一ツ橋商事陣営に寝返ったT-BOXの古参メンバー・大林隆二にヤエコ奪還の指示を出す。だが大林は花岡の画策でヤエコとの連絡も取れなくなり、焦りを募らせる。

 さらには花岡から、一ツ橋商事がTOBに関する議決を行う役員会の日程を調べるように、プレッシャーをかけられる。

 T-BOXと一ツ橋商事、その二重スパイとしてのジレンマに陥る大林。どちらか一方の肩を持つことができない彼は、井川には、T-BOXが特許出願中の極細ファスナーの情報を流す。

 同時に花岡には、一ツ橋商事の役員会の日程を伝え、「これで両者五分と五分…俺はなにも悪くない。あとはどうなろうと俺に罪はない」と責任逃れの身勝手な自己正当化を図るのだった。

買収が「破談」になる典型パターン

漫画マネーの拳 8巻P148『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク

 企業買収では、資金力や持ち株比率だけでなく、情報も重要な武器になる。いつ、どのような条件で買収を仕掛けるのか。相手に知られずに準備を進めるからこそ先手を取れるし、逆に計画が漏れれば、相手に防衛策を講じる時間を与えてしまう。

 それを示す具体例が、2017年2月にあった、米食品大手クラフト・ハインツが英蘭系日用品大手のユニリーバに出した買収提案だ。

 当時クラフト・ハインツは約1430億ドルという巨額の買収を提案したが、ユニリーバはその提案をすぐに拒否。クラフト・ハインツは公表からわずか数日で買収を撤回するに至った。

 当時ロイターが報じたところによると、買収提案が早すぎる段階で公になったことで、交渉自体が難しくなったのだという。

 もちろんそれだけが「破談」の原因とは限らないが、秘密裏に進めるはずの交渉がすぐに公になったのだとすれば、それが状況を変える一手になったことは想像にかたくない。

 T-BOXと一ツ橋商事の間で揺れる大林だったが、彼の行動は、結果として花岡の覚悟を促すことになった。大林の報告から3日後、これまで低迷していたT-BOXの株価が上昇する。

「TOBが市場で噂されてる? そうか、いよいよくるか!!」と、心の中でつぶやくのだった。

漫画マネーの拳 8巻P149『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク
漫画マネーの拳 8巻P150『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク