作家・直木三十五 写真:国立国会図書館
直木賞に名を残す作家・直木三十五は、破天荒な生き方でも知られている。借金を重ね、下戸でありながら、酒豪ひしめく高級料亭に通い続けていた。ところが、そんな型破りな直木のもとには、多くの作家や文化人が自然と集まってきたという。なぜ直木は周囲の人を惹きつけたのか。その生き様をたどる。※本稿は、記者の栗下直也『偉人たちの酔っぱらい流儀』(平凡社)の一部を抜粋・編集したものです。
大物作家たちをトリコにした
文豪・直木三十五の3つの武器
毎晩のように料亭に通い、芸者を呼び、派手に金を使った。しかも、酒は一滴も飲まない。下戸なのに料亭の常連、金がないのに贅沢三昧。
この矛盾だらけの男の名は、直木三十五。直木賞にその名を残す文豪は、実は稀代の借金王だったが、驚くべきことに、借金まみれの下戸が、酒豪ひしめく文壇の宴席を完全に支配していた。
武器は3つ。麻雀、文壇ゴシップ、そして憎めない人間力。
酒を飲まずに料亭で、菊池寛や芥川龍之介などの大物作家たちを虜にした。現在の貨幣価値で月収1000万円前後を稼ぎながら常に金欠だった。「小心にして傲岸、寡黙にして雄弁、浪費家で稀代の借金王、口説き下手の芸者好き」という矛盾の塊だった。それでも人が離れない。むしろ惹きつける。
直木三十五の生き様は、現代のビジネスパーソンに究極の問いを投げかける。宴席で本当に必要なのは酒なのか、それとも別の何かなのか。
直木が昭和初期の文壇で最も料亭に愛された作家の一人だったことは、彼自身が記したエピソードからも明らかだ。







