ニューヨーク証券取引所やナスダックなどは12月6日から米国株の「23時間取引」を開始する Photo:Bloomberg/gettyimages
米証券取引所の23時間化
期待される日本からの取引フロー拡大
現在、ニューヨーク証券取引(NYSE)所などの米証券取引所の取引時間は、平日の米東部時間の午前9時30分〜午後4時の通常取引と、前後に設けられている時間外取引を合わせて1日16時間程度だ。ところが12月6日からは、NYSEとナスダックなどに上場する主要銘柄の取引時間が7時間延長され23時間取引となる。
取引時間の23時間化の動きは、米国だけでなく英国にも広がっている。ロンドン証券取引所グループ(LSEG)は7月21日、2027年の上期に1日24時間のうち30分を除く時間帯で取引を可能にする「LSE24」を開始すると発表した。LSE24は当面、英国や海外の株式などに連動する上場投資信託(ETF)など上場取引型金融商品(ETP)を取引対象とするが、将来的に株式を取り扱うことも視野に入れるという。
米国の主要株式市場が23時間化することで、日本の投資家は、東京証券取引所を中心とする日本の取引所に上場する銘柄だけでなく、米国株も日中に取引することが可能となる。
米証券取引所が期待するのは、日本からの取引フローの拡大だ。すでにナスダックでは、時間外取引が米国株取引高の約11%を占め、プレマーケットの取引は2019年以降15倍に増えた。23時間化により日本の投資家が日中に米国株を取引できるようになれば、米証券取引所の取引高がさらに増えると期待される。
NISAの積み立て投資でも、海外株式を対象とする商品への選好が鮮明だ。26年5月のNISAつみたて投資枠における投資信託買い付け額上位10銘柄のうち、7銘柄が海外ものだ。この事実は、日本の家計が資産形成の中心を国内株だけに置かなくなったことを示唆している。
米宇宙会社スペースXの新規株式公開(IPO)をきっかけに、米国株取引を開始した個人投資家が一気に拡大したもようだ。一部報道によると、大手ネット証券では、スペースXがIPOした4〜6月期に米国株の売買代金が前年比2倍と急増し、米国株を保有する顧客数や預かり資産が前年比5割超の増加となった。NISA→少額投資非課税制度(NISA)という制度面での追い風もあり、足元では米国株取引のニーズがさらに高まっていると推察される。
日本の投資家の時間を
米国市場が略奪する
米証券取引所が23時間化で日本から取り込もうとしているのは、投資資金だけではない。日本の投資家が日中に金融市場へ振り向ける「時間」も対象となる。
人が金融市場を見る時間や、銘柄や取引に関する情報を処理する時間には限界がある。日中に株価を確認する時間が有限であれば、米国株を見る時間が増えた分、日本株に注意を向ける時間が相対的に短くなる。
行動ファイナンスの研究でも、個人投資家は全銘柄を均等に比較するのではなく、ニュースや大きな値動きによって注意を引いた銘柄を取引候補とする傾向があることが確認されている。投資家の注意は売買の前段階にある曖昧な心理ではなく、実際の注文を左右する市場資源である。







