若者が集まる草津温泉
2つの強みとは

 JTB総研をはじめとした旅行動向分析によると、Z世代には顕著な旅の傾向がある。非日常を味わいに遠出するよりも、SNS映えするスポットやグルメなど「日常の延長線上にあるリフレッシュやご褒美」を求めて安近短の旅を好むという。

 旅行アプリアゴダの調査では、日本のZ世代の約75%が国内の1〜3日旅行を選び、長期旅行を1回するよりも短期旅行を複数回楽しむ傾向が強いという分析も出ている。実際に泊まってみて、確かに草津はそういった若者のニーズに対して、ぴったりな観光地だと思った。

 そのひとつが、泊食分離(宿泊と食事を分ける形態)が進んでいる点だ。温泉街では旅館で1泊2食付き、夕飯は懐石料理を食べるのが定番だったが、若者からすると「品数が多過ぎる」「選ぶ自由がない」「形式的でつまらない」といった不満もあった。

 これを受けて草津の旅館側は素泊まりプランを推すようになり、街全体で手頃な料金で楽しめる飲食店、今っぽいカフェやスイーツ店なども増やす取り組みを行っているという。

「廃墟に苦しむ鬼怒川」と「若者でにぎわう草津」温泉街の明暗を分けた決定的な違いスイーツ店は、プリンやどら焼きなどの店が相次ぎオープンし人気 Photo by H.M.

 夜遅くまで営業する飲食店が多く、素泊まり客はステーキやそば、寿司、ダイニングバーなど好きな店で好きなメニューを選ぶことができる。もちろん、「ひもかわうどん」などご当地の味を堪能することも可能だ。

 筆者も、夕食は旅館で取らず、飲食店をハシゴして、上州和牛や蕎麦など好きなものを好きなだけ食べた。

「廃墟に苦しむ鬼怒川」と「若者でにぎわう草津」温泉街の明暗を分けた決定的な違い上州和牛で肉寿司を食べてみた。こちらも映え対策がバッチリ Photo by H.M.
「廃墟に苦しむ鬼怒川」と「若者でにぎわう草津」温泉街の明暗を分けた決定的な違い上州和牛の専門店 Photo by H.M.
「廃墟に苦しむ鬼怒川」と「若者でにぎわう草津」温泉街の明暗を分けた決定的な違い行列のできる蕎麦屋も訪問 Photo by H.M.
「廃墟に苦しむ鬼怒川」と「若者でにぎわう草津」温泉街の明暗を分けた決定的な違いオシャレなカフェバーもある Photo by H.M.
「廃墟に苦しむ鬼怒川」と「若者でにぎわう草津」温泉街の明暗を分けた決定的な違い手軽な料金の居酒屋もあった Photo by H.M.

 実は温泉街には、「完結し過ぎは衰退する」という説がある。客が風呂も食事もおみやげを買うのも宿の中で済ませてしまうと、街に出ることがなく、結果的に活気がなくなるという問題だ。まさに、鬼怒川がこれに当てはまる。

 草津は100室を超えるような大型旅館が、鬼怒川ほど多くない。泊食分離の推進にしろ、中小規模の宿や飲食店が協調し、温泉街として一体となって持続的成長を目指す、軸が明確だ。

 というのも昔からの住民が自主的に街づくりに関わっているそうだ。バブル期の草津はスキーブームに浮かれたが、一方で「歴史と伝統を守る会」が組織され、電柱の移設や沿道の緑化、旧来の建築様式の再現などが行われた。このおかげで、他の温泉地に比べると過度なホテル開発を避けることができたという。

「廃墟に苦しむ鬼怒川」と「若者でにぎわう草津」温泉街の明暗を分けた決定的な違い草津では昔ながらの街並みを守る取り組みが行われた Photo by H.M.
「廃墟に苦しむ鬼怒川」と「若者でにぎわう草津」温泉街の明暗を分けた決定的な違い温泉まんじゅうの名店も、新しいスイーツ店に負けず、試食販売などしてアピール Photo by H.M.
「廃墟に苦しむ鬼怒川」と「若者でにぎわう草津」温泉街の明暗を分けた決定的な違い温泉まんじゅう店など昔からの住民が主体となって温泉街を盛り上げている Photo by H.M.

 その後、東日本大震災やコロナ禍などの集客危機でも、地元住民や草津町の主導で、共同浴場の新設や湯畑広場の整備などが進んだ。ライトアップや映え対策などもそうだ。

 ちなみに映えスポットはつくるだけでなく、「撮影しやすくする」工夫を施してあることにも驚いた。湯畑では良い写真が取れる角度を狙ってスマホスタンドが設けられていた。光泉寺のライトアップは、ハッシュタグをつけてSNS投稿するとプレゼントがもらえた。

「廃墟に苦しむ鬼怒川」と「若者でにぎわう草津」温泉街の明暗を分けた決定的な違い映え対策がすごかった Photo by H.M.
「廃墟に苦しむ鬼怒川」と「若者でにぎわう草津」温泉街の明暗を分けた決定的な違い撮影しやすくなる工夫もあった Photo by H.M.

 こうした細かな施策が、若者のSNS拡散を促し、さらに人を呼ぶ好循環を生んでいる。草津の強みをまとめると以下2点に集約されるだろう。

(1)若者の旅行ニーズに応え、拡散させる仕組みづくり
(2)住民も参加する自主的な街づくり