将来的に5人に1人がなると言われている「認知症」。運や遺伝によってなると考える人も多いが、じつは意外な要因によって、そのリスクが高まることがわかった。
それが「糖」による影響だ。そう指摘するのが、オックスフォード大学の研究員として世界的難病の治療法の発見に貢献し、現在は医師としても活躍する脳と糖の専門家である下村健寿氏。著書『糖毒脳――いつまでも「冴えた頭」でいるために知っておきたいこと』で、「糖に毒された脳」を「糖毒脳」と名づけ、糖が認知機能を崩壊させるメカニズム、そして脳を守るための習慣を紹介している。同書から、一部を抜粋・編集し紹介しよう。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局・石井一穂)
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認知症を引き起こす意外な要因は、「脂肪」
認知症を引き起こす、意外な要因がある。
それは、内臓脂肪や脂肪肝だ。
認知症というと「脳の異変」と思われがちだが、意外にも、体に溜まった余計な脂肪が、発症要因の1つになっていると言われている。
「余分な脂肪」が体に悪さをする
なぜ脂肪が、認知症を引き起こすのだろう。
その鍵を握るのが、「炎症誘発物質」だ。
元オックスフォード大の医学研究者であり、医師としても活躍する「糖と脳」の専門家である下村健寿氏は著書『糖毒脳――いつまでも「冴えた頭」でいるために知っておきたいこと』で、こう指摘している。
「悪い炎症」である慢性炎症。最大の原因は、血液中に炎症誘発物質が出現することにあります。炎症誘発物質は血液の流れに乗って脳を含む全身にばらまかれ、体中に小さな炎症を引き起こします。この炎症誘発物質の主な発生源こそが、内臓脂肪や脂肪肝なのです。
――『糖毒脳――いつまでも「冴えた頭」でいるために知っておきたいこと』より
脂肪とは本来、飢餓状態に備えて体の中に蓄えておく、いわば「備蓄エネルギーの倉庫」だ。
たとえ食べ物が手に入らなくても、私たちはこの備蓄エネルギーを放出することで体の機能を維持できる。
この備蓄倉庫にあたるのが皮下脂肪だ。
いくら皮下脂肪が溜まっても、健康に悪い影響はほとんどない。
それどころか、皮下脂肪は備蓄栄養の倉庫としてだけでなく、体温を保つ断熱材や、外部からの衝撃を守るクッションとしても大いに役立ってくれる。
しかし、体の深い部分、とくに胃腸の周りや肝臓に溜まってしまった内臓脂肪や脂肪肝となると話が変わる。
下村氏は、こう指摘する。
これらは、本来の貯蔵庫である皮下脂肪に収まりきらないほどの余分な脂肪を抱え込んだ結果、行き場を失った脂肪が、まるで「倉庫ではない住居スペース」に無理やり押し込まれたかのように蓄積した状態です。
これらの脂肪はまったく役に立たないどころか、体にとって深刻な悪影響を及ぼします。
――『糖毒脳――いつまでも「冴えた頭」でいるために知っておきたいこと』より
「炎症誘発物質」が、認知症を引き起こす
溜めてはいけない場所に無理やり脂肪を詰め込むのだから、弊害が出るのも当然だ。
では、その弊害とは?
下村氏は説明を続ける。
家にゴミを溜め込んだゴミ屋敷が悪臭などの問題を引き起こして近隣に迷惑をかけるように、脂肪を溜め込んだ内臓脂肪や脂肪肝から炎症誘発物質が分泌され、体中を障害することになるのです。
この炎症誘発物質が脳にも作用することで、アルツハイマー病をはじめとする認知症の発症リスクを上げてしまいます。
――『糖毒脳――いつまでも「冴えた頭」でいるために知っておきたいこと』より
内臓脂肪や脂肪肝から分泌された炎症誘発物質が脳にも作用し、認知症リスクを高める。
脂肪を溜め込む大きな要因の1つが、まさに「糖」だ。
「これもまた、間接的には糖によって脳が毒された状態だと言える」と、下村氏は述べている。
(本稿は、『糖毒脳――いつまでも「冴えた頭」でいるために知っておきたいこと』の内容を引用して作成した記事です)
福島県立医科大学卒。同大副理事、医学部病態制御薬理医学講座主任教授。現役内科医でもある基礎医学研究者。日本糖尿病学会東北支部学術評議員。日本内科学会認定内科医。医学博士。群馬県前橋市出身。2004年、日本で働いていた大学医学部から、英国オックスフォード大学への就職を試み、執念の就職活動を実らせて成功。オックスフォード大学正式研究員として、世界を代表する生理学者フランセス・アッシュクロフト教授の薫陶を8年間受けた。その間、新生児糖尿病治療法の発見という世界的快挙に貢献。新生児糖尿病の最重症型であるDEND症候群の脳神経症状治療有効例を報告した論文は米国神経学会誌「Neurology」よりEditorial論文に選出された。貢献を認められて2006年と2010年にオックスフォード大学メリット賞を2度受賞。日本帰国後は、新生児糖尿病に加えて肥満・2型糖尿病などの生活習慣病について、インスリン分泌や脳機能の観点から研究している。








