「寝てないアピール」は職場でも煙たがられる行動の代表格だが、高市首相が使っても政権へのダメージはほとんどないようだ Photo:JIJI
疑惑追及時の“寝てないアピール”は危機管理において「最悪のミス」とされています。しかし現在、サナエトークン疑惑の追及に対して同様のアピールで遁走した高市首相は、激しく叩かれるどころか同情の声すら集めています。政権へのダメージがほぼゼロに近い理由を分析しました。(ノンフィクションライター 窪田順生)
「私は寝てないんだ」
失言で消えた雪印社長
今から25年前、日本で初めて外務大臣になった田中真紀子氏に対して、国会でこんな辛口のエールを送った女性議員がいた。
「ほかの女性議員も、一挙手一投足、マスコミではございませんけれども、注目をしている、これは事実でございますので、ぜひとも、パニックであるとか寝てないとか、忙しかったとか、時間がないとか、そういう弱音を公式な場では吐かないでいただきたいと思うのでございます」(第151回国会 衆議院 安全保障委員会 第8号 平成13年6月14日)
遠回しにチクリとやる独特の言い回しからピンときた人も多いだろう。現・東京都知事の小池百合子氏である。
就任したばかりの田中氏に対してなぜこんなクギを刺したのかというと、実はこの11カ月ほど前、「寝てないアピール」をしたリーダーが大炎上して、全国民からソッポを向かれてしまったことがあるからだ。
それは雪印乳業の石川哲郎社長(当時)。2000年7月4日、集団食中毒を発生させてしまった同社が記者会見を終えて、エレベーターに乗り込もうとした同社の石川哲郎社長に、会見の延長を求める報道陣が殺到したきのことだった。
石川社長が「私は寝てないんだ」と発言し、記者側も「こっちだって寝ていないですよ」などキレて言い争う姿が、テレビで全国に放送されたことで同社に批判が殺到。商品の不買や店頭からの撤去などにも繋がり、雪印ブランドの信用は失墜してしまったのだ。
この一件もあって、不祥事・不正など痛いところを追及されたリーダーが説明を拒んで「私は寝てないんだ」と逃げていくというのは、危機管理の世界では「絶対にやってはいけない悪手」とされてきた。筆者もこれまで政治家をはじめさまざまな分野のリーダー200人以上に、リスクコミュニケーションのトレーニングをしてきたが、そこでもそのようにレクチャーしてきた。
しかし、時代も変わればセオリーも変わるということか、令和の大人気リーダーは「寝てないアピール」をサラッとやってのけ、しかもそこまで叩かれていない。そう、「サナエトークン」の問題を追及されている高市早苗首相のことだ。







