タイヤ代をめぐる運送業界の悩み

 大型トラックは、毎日とてつもない距離を走る。燃料費はもちろん、人件費、部品代、整備費までが容赦なく上昇する中、「タイヤ代をどうするか」は、運送会社の収益に直結する大問題だ。

 タイヤは溝がなくなるまで長く使いたい。とはいえ安全性を落とすことはできない。さらに昨今ではCO2排出量の削減も求められる……その現実的な解のひとつが、「リトレッドタイヤ」(更生タイヤ)である。

 リトレッドタイヤとは、走行によって摩耗したタイヤのトレッド(接地面)を削り取り、新しいトレッドを貼り直して再使用するタイヤのことだ。日本では「更生タイヤ」あるいは「再生タイヤ」とも呼ばれている。乗用車ユーザーに馴染みは薄いが、バスやトラックなど商用車の世界では昔から使われてきた技術である。

 リトレッドのメリットは明確だ。使用済みの古タイヤを再利用するので、なによりも安い。また新品タイヤをイチから製造するよりも資源使用量を大幅に削減できる。製造時のCO2排出量も抑えられる。経済合理性と環境合理性が両立する、極めて現実的な選択なのだ。

 ところが我が国のリトレッド普及率は、お世辞にも高いとは言い難い。

 日本国内のトラック・バス用タイヤ市場におけるリトレッド率は、ざっくり2割程度しかない。一方、米国・カナダでは商用トラック用タイヤの約44%がリトレッドとされる。道路事情や物流の運用方法が異なるため単純比較はできないが、日本の利用率はトラック大国の半分以下なのだ。なぜか。理由は利用者側の心理にあるのではないか。

「更生タイヤ」と聞くと、つい「古タイヤを貼り直したもの」という印象が先に立ってしまう。安いのは大いに結構、環境に良いのも時代に合っている。でも本当に安全なのか。操縦安定性は確保されるのか。あっという間に減ってしまい、逆に高くついたりしないのか……。まあウチの会社はやめとこう……そう考える事業者は少なくないだろう。

日本国内のタイヤのリトレッド率日本国内のタイヤのリトレッド率 Photo:Diamond

工場見学で覆った先入観

 実は不肖フェルも、TOYO TIRE新潟リトレッド工場を見学するまではそうした負の先入観を持っていた。だが一連の作業を、とりわけ「台タイヤ」の選別工程を見て考えが変わった。回収された古タイヤは、そもそも片端からリトレッドされるわけではないのだ。

 まず洗浄し、外観を確認し、さらにタイヤの内側から高電圧をかける。内部のワイヤー損傷や目に見えない異常まで確認する非破壊検査も行われている。外観上はまだ十分に使えそうに見えるタイヤでも、内部に問題があればリトレッドには回されない。

「はい、これNG」と溝が十分に残るタイヤを弾いた検査員の方に、「え?これはまだ使えません?」と思わず声をかけてしまったほどだ。

 リトレッドとは、古いタイヤを再利用する技術である以前に、「もう一度使って良いタイヤ」と「使ってはいけないタイヤ」を見極める技術でもあるのだ。

 もうひとつ意外だったのは、台タイヤがTOYO TIRESのタイヤ“だけ”ではないことだ。

 検査前タイヤの山の中には、ブリヂストン、ダンロップ、ミシュランなどの他社製タイヤがたくさん並んでいる。新品タイヤの市場で競合するブランドが、リトレッドの現場では同じ工程に乗っているのだ。仕上がったリトレッドタイヤのショルダー部分には、「TOYO TIRES」と「MICHELIN」の名前が並んでいるのはなかなかシュールな光景だ。言わばタイヤのダブルネームである。

 使用済みタイヤを回収し、入念に検査し、選別し、再び道路へ戻す。

 リトレッド工場で、タイヤメーカーの「もうひとつの役割」も見えてきた。