バフィングと補修――精度と人の目が支える工程

 巨大な機械に台タイヤを固定し、タイヤを回転させながら摩耗したトレッド面を削っていく。ただ表面を削れば良いという訳ではない。削り過ぎれば台タイヤを傷めてしまう。削り足りなければ、新しく貼るトレッドが密着しない。

 新品のタイヤは均一品質の工業製品だが、台タイヤは違う。長距離を走ってきた、傷も摩耗度合いも違う、それぞれに個性のある“個体”なのだ。

高速で回転する台タイヤを削るバフマシーン高速で回転する台タイヤを削るバフマシーン。削り過ぎても、削り足りなくてもいけない。単純に見えて、精度が求められる工程だ Photo by A.T.
バフィング工程のアップ。右側に見えるのがタイヤを削る刃物だ。巨大な回転式大根おろしのようなものだバフィング工程のアップ。右側に見えるのがタイヤを削る刃物だ。巨大な回転式大根おろしのようなものだ Photo by A.T.
その刃物にも様々な種類がある。用途により使い分けるその刃物にも様々な種類がある。用途により使い分ける Photo by F.Y.

 バフィング工程を経たタイヤの表面は、驚くほどザラザラだ。新しいゴムを密着させるためには、表面に適度な“粗さ”が必要なのだ。トレッドパターンは消え、丸く均された黒い土台だけが残っている。パターンを削られて丸裸になった台タイヤは、毛を刈られた羊のような姿になる。

バフィングが済み、表面がザラザラになった台タイヤバフィングが済み、表面がザラザラになった台タイヤ Photo by A.T.

 次に行われるのが、損傷箇所の補修だ。

 検査で確認された傷や異常の周辺を、熟練の作業員がグラインダーで慎重に削っていく。火花が飛ぶ。どこを削るか。どこまで削るか。人間の判断が入る。たくさんの機械が並ぶ工場でありながら、最後は人が見て、人が触り、人が決める。ここが実に興味深い。検査、洗浄、選別、切削、補修。どの工程にも、「もう一度道路に戻して良いか」を判断する「人間の目」が入っているのだ。

損傷箇所をグラインダーで補修する作業損傷箇所をグラインダーで補修する作業。このあと補修用ゴムで補修箇所を埋めていく Photo by F.Y.