
りん、平看護婦に格下げ
ヒデの次は、製薬会社勤務の虎太郎(小林虎之介)の場合。
病院に虎太郎がやって来た。彼の勤務する製薬会社では病院の担当は部下に任せているが、今日はご挨拶に来たとりんに言う。
えー、もう、部下まで持つようになったのか。すごいぞ虎太郎。
「何だか元気なさそうだけど」とりんを気遣う余裕もある。りんが新人看護婦が辞めてしまうのだと話すと、虎太郎の返事はこうだ。
「うちの会社も辞める者はいるけど、それは仕方ない」「遅かれ早かれ、しょせん辞めるやつは辞める。成果が出ないのは、その人に力がないからだ。努力した者は努力しただけ上に上がれる。いまはそういう自由な世の中なんだ」
「でも努力じゃどうにもならないことだって。お金がなくて、学校に行けなかったり、病気になったり、そういう人たちだっているでしょ」とりんは反発する。
「俺はりんのせいじゃないって言ってるんだ」と虎太郎。
りんを思いやって言ったことだとは思う。ただ、「努力した者は努力しただけ上に上がれる。いまはそういう自由な世の中なんだ」は本心だろう。
身分制度の名残が色濃く残る時代を生きてきた虎太郎は新しい時代が来たことで救われている。現にすでに部下をもつまでになっているのだから、いまの社会のルールは虎太郎にとって願ってもないものだろう。
「努力すれば報われる」――これもまた、明治の出世論だったのかもしれない。
いずれにしても、ヒデのようにさっさと見切りをつけて辞めるのも自由。虎太郎のように粘って出世するのも自由。誰もが自分の意志で仕事を選べる時代がやってきていた。
虎太郎「俺だって」
りん「私、そろそろ行かなくちゃ」
虎太郎「頑張って」
りん「虎太郎も」
去っていくりんを見送って、虎太郎はふーっとため息。昔からりんと虎太郎は言いたいことが言えない関係だ。
仕事は努力すればレベルが上がっていくが、恋は努力してもどうにもならない場合もある。
3人めは、入院患者で庭師の山本(本田大輔)。
優秀で期待の生徒だったヒデが辞めることになり、院長(筒井道隆)はりんを取締から外す。院長のこの短絡的な判断、なんとかしてほしい。
平看護婦となったりんは、辞めたヒデの代わりに山本の担当になった。
りんの境遇を聞いた山本は「自分が努力するより下の者を指導するほうが大変」と自分の経験に基づいて語る。そう、自分がやれば簡単に済むことをあえて部下にやらせて学んでもらう。上に立つ者はそういうこともしないとならない。上司はつらいよ、だ。







