パソコンで作業する男性写真はイメージです Photo:PIXTA

「朝一番に最も重要な仕事を片づけるべき」という説がある。しかしハーバード・ビジネス・スクールの研究によると、簡単なタスクから始めたほうがその後の集中力や仕事の成果が高まる可能性があるという。サイエンスライターが、科学的に裏づけられた集中術を紹介する。※本稿は、鈴木 祐『人生を変える科学的な集中術』(SBクリエイティブ)の一部を抜粋・編集したものです。

忙しい時に限って
現実逃避してしまう理由

 大事な勉強をしなければならないのに、なんとなく急を要しないメールの返信に集中したり、YouTubeを見続けたりしてしまう……。

 誰にでも起こり得るこのような現象を、心理学の世界では「達成バイアス」と呼びます。長期的で重要なタスクよりも、短期的で重要度が低いタスクに意識を集中させてしまう現象のことです。

「達成バイアス」が集中力におよぼす悪影響は言うまでもありません。

 アメリカの病院から約4万件におよぶ治療データを集めた研究では、1日の患者数が増えるごとに医師たちの達成バイアスが激増。達成バイアスにとりつかれた医師は、症状が軽い患者を優先し、重病の患者を後回しにしたそうです(注1)。

 身に覚えのある人は多いでしょう。仕事は山積みなのについ部屋の掃除を始めたりマンガを読みふけったりと、手近なタスクに集中力を使ってしまうのはよくある話。私たちのなかには、忙しくなるほど大事な仕事から目をそむけたくなる心理システムが備わっているのです。

 そのため、昔からビジネス書の世界では「難しい作業から先にやるべし!」といったアドバイスがなされてきました。難易度が高いタスクをはじめに終えてしまえば、あとはリラックスして残りの作業に取り組めるからです。「まず、朝一番にカエルを食べろ!(=難しくて大変な仕事から手をつけよ)」と主張するブライアン・トレーシーの著作などが代表的な例でしょう。

 感覚的には説得力があるアドバイスですが、実はここ数年は、「達成バイアス」を正しく使ったほうが集中力が高まるとの報告が増えてきました。難しい作業から手をつけるのではなく、メール返信のような手近なタスクを先にしたほうが、最終的な成果は上がりやすくなる、というのです。