さらに、ここから何度も記録をくり返すと、より興味深い変化が起こります。獣のなかに、「これだけ大事なことをしっかり続けられたのだから、自分には高い能力があるに違いない」という感覚が育つのです。記録の継続があなたの自信を高め、その感覚が日々の仕事に取り組む意欲を高めてくれるわけです。

 事実、先の研究でも、家計簿をつけたグループには自己効力感の増加が確認されています。こんなことで獣の感覚を誘導できるのだから、ぜひ試すべきでしょう。

 記録する内容は、どうせなら集中力の向上に役立つデータを残したいところです。「MINDスコアボード」(編集部注/毎日の食事でどれだけ脳に良い食品を摂れたかを採点する手法)や「報酬感覚プランニング」(編集部注/人間の本能が強く反応する「報酬の予感」が最適化するようにデザインされたワークシート)などは、どれも記録のトレーニングにうってつけでしょう。

 また、よく言われることですが、ゴールまでの進捗状況を記録するのも非常に良い方法です。リーズ大学によるメタ分析では、作業の進み具合を記録した場合、目標の達成率は「d+=0.40」の効果量で高くなるとのこと(注3)。劇的な効果とまではいかないものの、十分に試す価値があるレベルです。

記録の仕方を間違えると
効果は半減してしまう

 ゴールまでの進捗状況を記録するときは、次のポイントに注意してください。

(1)行動を変えたいときには、自分がとった行動だけを記録する

(2)結果を出したいときには、結果への過程だけを記録する

 たとえば、減量を目指す人が食事の内容を記録すると、ダイエットが失敗に終わる確率は高くなります。「減量」という結果を目指したはずなのに、「食事」という行動の内容を記録したからです。

『人生を変える科学的な集中術』書影人生を変える科学的な集中術』(鈴木 祐、SBクリエイティブ)

 体重を減らすのがゴールなら、体重の記録に集中するのが基本中の基本。逆に食事の習慣を変えたいなら、食べたものを記録したほうが効果は高くなります。もう少し例を挙げてみましょう。

・貯金を増やしたければ、貯金額の増減だけを記録する

・タバコを止めたければ、タバコを吸わなかった日数だけを記録する

・運動を続けたければ、ジムに行った日数だけを記録する

 ここを間違えると記録の効果は激減します。記録をつけるときは、必ず行動と結果の対応を取ってください。

 記録の効果が出るまでの目安は最低でも2カ月です。即効性はないテクニックなので、数日で効果を実感できなくても諦めずに続けましょう。

(注3)Benjamin Harkin, Thomas L. Webb, Betty P. I. Chang, Andrew Prestwich, Mark Conner, Ian Kellar, Yael Benn, and Paschal Sheeran (2016) Does Monitoring Goal Progress Promote Goal Attainment? A Meta-Analysis of the Experimental Evidence