与えられた仕事は自分の責任においてしっかりと果たしますが、それ以上のことはきっぱりと線を引きます。ここは大事だ、というところは慎重にこなしますが、なんでも完璧にしすぎず、余裕をもたせる工夫をしているところも特徴です。
終業前に仕事を頼むと
「明日対応します」と断られる
また、疲れたまま働き続けるよりも、いったん休んで回復してから再開したほうがより良い成果が出せると考えます。そのため、ダラダラと仕事をしたり、会社に居残ったりすることもありません。
予定していた仕事が終わらなくても、切り替えて翌日に持ち越しますし、休日にメールを返信したりオンライン会議に参加したりする人も、まずいません。上司から自分の責任範囲外の仕事を任されそうになったら、あっさりと断ります。
当時銀行員だった父も、ドイツ駐在中によく同じ経験をしたそうです。ドイツ人の部下が17時ぴったりに退社する姿を見て「あっ、仕事を頼み損ねた」と思う時が度々あったそうです。
17時直前に仕事を頼んでも「明日対応します」とあっさり退社していく。その姿を見て「ここはドイツだった」と思ったことも一度や二度ではありません。これは40年前の出来事ですが、この働き方は今も変わっていません。
彼らは、休息すること自体がより良い成果のために欠かせないと考えています。だからこそ、休みも将来の成果を見据えて意識的に取っているのです。
日本人の場合、周囲が忙しそうに働いているなか、自分だけ早く帰るのはなかなか勇気がいります。有給を取るにも周りの様子や状況を優先しますし、自分の権利なのに「取りづらい」と感じてしまうことも多いでしょう。
そして、いつの間にか当然のように、他人からの評価のために仕事をし、休むときでさえ、今度は家族の要望に応えるために休んでいます。
しかし、ドイツ人たちが大切にしているのは、自分の責任の範囲や果たすべき役割、それが会社や組織の目的に貢献できるかどうかです。
彼らは組織のゴールや目的を明確にし、そこを目指して仕事をこなします。そのため、ゴールまでの最短コースを考えます。だから意味のない会議はしません。
また、何か課題がある場合には相談するべき人と話をしたり、行動を変えてほしい相手とはきちんと直接話したりするようにしています。直接関係のない同僚とダラダラと愚痴を言い合ったりすることはあまりしません。無駄をできるだけ省いて効率を高め、きちんと自分の時間を確保します。
だからこそ、仕事と同様に休むことを大切にします。そして自分のために使う休日を過ごすのです。
「休むこと」を前提とした
社会や暮らしのあり方
ここまでを読むと、「それはドイツ人だからできること」「日本社会では真似できない」と感じた方もおられるかもしれません。
『日本の3倍休んで1.5倍の成果を出す ドイツ人のすごい休日』(松居温子 SBクリエイティブ)
たしかに、社会制度や文化的側面、受けた教育の価値観の違いから見れば、ドイツ人と日本人では置かれている環境や思想がまったく異なりますし、そもそも真似したくてもできないと思う方も少なくないと思います。
それでも注目したいのは、彼らの考え方や実践のなかに、日本人が抱えがちな葛藤を解きほぐし、今までより自分の時間を確保しながら、成果を高めるヒントがあるということです。
ドイツ人は、社会制度が整っているから休んでいるわけではありません。むしろその逆で、「休むこと」を前提とした社会や環境、暮らしのあり方を、自らつくり上げてきたのです。
制度が休みやすさを支えているのは事実ですが、その根底には、もともと彼らが大切にしてきた価値観があります。その価値観を仕組みにした結果が、現在の社会制度なのです。







