スタートアップが成功できるか、失敗して消えてしまうか? それを決めるのは、Product Market Fit(PMF:プロダクト・マーケット・フィット/市場で顧客に愛される製品・サービスを作ること)を達成できるかどうかにかかっている。『増補改訂版 起業の科学 スタートアップサイエンスVer.2』(田所雅之著、ダイヤモンド社)は、起業家の8割が読み、5割が実践する起業本のベストセラー『起業の科学』を9年ぶりに大改訂した最新版。本連載では同書から抜粋して、スタートアップの成長を加速するポイントについて、わかりやすくお伝えしていきます。
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具体的な人物像(ペルソナ)を思い描く
次に、想定した課題をカスタマーが本当に必要と感じているのかを検証する、CPF(Customer Problem Fit/課題の検証)について、それを具体的に進めていく手法に話を移そう。
課題を検証するときの最初のステップは、マーケティングの定石であるペルソナの想定だ。
ペルソナとは、想定したカスタマーのイメージを具体化するための「25歳、女性、インバウンドの旅行者」といった人物像のことをいう。こうした具体像を設定し、どんな課題を抱えているのかを詳しく見ていく。
以前に紹介したリーンキャンバスでは、課題を抱える顧客セグメントについて記述した。
そこをさらに深掘りするためにペルソナを用意し、その心情や行動に焦点を当てていく。
“どのような課題を、どのようなソリューションで”
という問いを投げかける
ペルソナを想定するときは、リアルな人物像を思い描くことが重要だ。
本質を突いた課題を設定するには、“誰の何(どのような課題)をどのように(どのようなソリューションで)”という問いを投げかける必要がある。
多くの場合、“誰の”という問いが抜けがちだが、“誰の”というユーザー像を具体的に落とし込めなければ、臨場感のある課題仮説は作れない。
顧客セグメントという大雑把な捉え方では、ユーザーの行動特性や期待すること、不満、不便に思っていることなどを詳細に描写することができなくなる。
具体的には、以下のような要素を埋めてペルソナを定めていく。
・年齢、名前、職業、性別、趣味、生活スタイル、現在の居住地、出身地など
・普段はどのようなメディアから情報を集めているのか、最近気になっている話題は何か
・日々の出来事にどういう印象を持ち、どういう性格の人か
・行動の特徴は? ITやスマホのリテラシーは?
・(BtoBのビジネスを考えるなら)どういった業務や仕事をしているか
その上で、「Plan Aを作成する」でリーンキャンバス上に設定した課題をペルソナがどう感じているか、課題を解決することで何を実現したいと考えているかという3点を想定する。
・何を課題(不満、不便、不安)に感じているのか?
・何を達成したいのか?
・インサイトを探る(本音ではどう思っているか? (たとえば、心の奥底でコンプレックスを感じたり、承認欲求を求めたりしていないか)
カスタマーからフィードバックが得られるたびに修正する
なお、ペルソナは一度定めたら終わりではない。
リーンキャンバスのループと同じように、実際のカスタマーからフィードバックが得られるたびに修正し、より臨場感があるものにしていくのである。
本連載の内容を具体的にするため、参考になるペルソナ像を定めておく(図表2-1-6)。
このペルソナ像は、日本へのインバウンド旅行者が制限つき無料でWi-Fi(無線LAN)を使えるようにするAny where Onlineというサービスを立ち上げる想定で定めたものだ。ペルソナはスマホで広告視聴などをすることで無線LANの利用可能容量を補充できる。
このAnywhere Onlineのビジネスモデルは、あくまで空想の産物であって実際に検証したものではないことに留意いただきたい。
(本稿は『増補改訂版 起業の科学 スタートアップサイエンスVer.2』の一部を抜粋・編集したものです)
株式会社ユニコーンファーム 代表取締役CEO
1978年生まれ。大学を卒業後、外資系のコンサルティングファームに入社し、経営戦略コンサルティングなどに従事。独立後は、日本で企業向け研修会社と経営コンサルティング会社、エドテック(教育技術)のスタートアップの3社、米国でECプラットフォームのスタートアップを起業し、シリコンバレーで活動した。
日本に帰国後、米国シリコンバレーのベンチャーキャピタルのベンチャーパートナーを務めた。また、欧州最大級のスタートアップイベントのアジア版、Pioneers Asiaなどで、スライド資料やプレゼンなどを基に世界各地のスタートアップ約1500社の評価を行ってきた。これまで日本とシリコンバレーのスタートアップ数十社の戦略アドバイザーやボードメンバーを務めてきた。
2017年、新たにスタートアップの支援会社ユニコーンファームを設立、代表取締役社長に就任。その経験を生かして作成したスライド集『スタートアップサイエンス2017』は全世界で約5万回シェアという大きな反響を呼んだ。
主な著書に『起業の科学』『入門 起業の科学』(以上、日経BP)、『起業大全』『「起業参謀」の戦略書』(ダイヤモンド社)など。





