もちろんその責任者個人ばかりに責めを負わせるべきでなく、そうした状況を見逃す組織や環境をつくっていたことにも問題があります。

 実際、1人または少数の担当者で経理を担当していると、こうした問題が起こり得ることは、残念ながらどの企業でも常に視野に入れておかなければなりません。

 海外進出が続いた時期などは、現地に経営者と製造担当と経理担当がそれぞれ1人しか行かないことも多く、こういった問題が生じる可能性を常に孕んでいました。

 そうした課題を克服するために、当時の電池事業本部が本部内で、相互チェックで基礎業務を徹底するための独自の業務点検制度をつくったのです。

 電池事業本部にある7つの各事業部から、主任クラスを選抜し、7つの経理責任者をリーダーにした独立した組織をつくり、このチームが、各事業部の経理実務を毎年2回、チェックすることになりました。ちなみに、チームの構成メンバーは毎年変わりました。それは人材育成のためでもありました。

 経理実務の抜けや漏れ、誤りなどのチェックのみならず、経営管理の問題に踏み込んで指摘することもありました。それは「事前の1策は事後の100策に優る」の実践であり、創業者がいう「止めを刺す」ことを仕組みの中で実現するためのものだったのです。

「大雪だろうと遅れは遅れ」
トヨタとの取引で現場の厳しさを知る

『陽はまた昇る』という、松下電器の傘下にあった日本ビクターのVHS開発物語を素材にした昔の映画をご存じでしょうか。亡くなられた名優・西田敏行さんが開発工場の責任者で、主人公の事業部長を演じていましたが、経理の責任者は渡辺謙さんでした。浜名湖工場もあのような雰囲気でした。

 工場内に経理部門の部屋もあり、製造現場が間近に見える場所での勤務をしていました。この工場はもちろん、トヨタ自動車さんとも取引があり、「さすがにトヨタさんは厳しさが違うな」と実感したことが多々ありました。