7月7日のロッキーズ戦1回、メジャーリーグ通算300号ホームランを放った大谷翔平選手7月7日のロッキーズ戦1回、メジャーリーグ通算300号ホームランを放った大谷翔平選手 Photo:Eric Thayer/gettyimages

ドジャースは大谷翔平選手と2023年12月に「10年7億ドル(当時のレートで約1015億円)」の大型契約を結びました。北米プロスポーツ史上最高額として世界に衝撃を与えましたが、これは球団が大谷を欲しい一心で積んだご祝儀価格ではありません。投打二刀流での稼働による勝利への貢献をベースに、スーパースターとしての希少性プレミアム、投打二刀流という“ユニコーンボーナス”などを加えて厳密に弾き出されたものなのです。そこには、企業買収にも用いられるバリュエーション理論が使われていました。新刊『メジャーリーグが10倍面白くなる超・観戦術』(青春出版社)から、この7億ドルの構造を解き明かしていきます。

選手の価値を換算できる指標「WAR」

 MLBで選手の契約額を決めるとき、最も有用な指標が「WAR(Wins Above Replacement)」です。「補欠レベルの選手と比べて、その選手が何勝分チームに貢献するか」を数値化したもので、打撃・走塁・守備・投球のすべてを得点換算し、最終的に「勝利」という単位に落とし込みます。

 1WAR=1勝分の貢献。これがMLBにおける選手評価の共通通貨です。契約交渉では、選手側の代理人も球団側のフロントも、まずこの「今後10年でどれだけWARを稼ぐか」を予測し、そこに1WARあたりの市場単価を掛け算して契約総額を組み立てます。

 MLB全体のFA選手の総年俸をWARで割ると、1WARあたりの貢献に対して支払われるべき金額は近年およそ800万ドル。この単価は年3%前後で上昇していきます。