「今後10年でどれだけ活躍するか」を算出
契約を結んだ当時、大谷選手は29歳。投打二刀流を維持した2023年のWARは投打合計で11に到達しており、選手として完全にピーク付近にありました。
普通の選手であれば、いい条件での長期契約を結ぶのが難しくなってくる年齢です。ここから先は、ゆっくりピークアウトしていくと予測するのが自然。契約初年度を10WARと見立て、1年で1WARずつ減っていくと想定できます。
これに、1WAR単価が年3%上昇していく前提を掛け合わせると、10年間の総額はおよそ4.9億ドルになります。
つまり、大谷選手のパフォーマンスだけを純粋に金額換算した場合、ドジャースが支払うべき妥当な総額の第一段階は4.9億ドル。しかし、実際の契約はここから2億ドル以上上振れています。この差額はどこから来たのでしょうか。
直前に結ばれたジャッジ選手の契約が比較対象
契約を弾き出す際、MLBの球団は必ず「直前に結ばれた類似契約」を参照します。企業のM&Aで、類似企業の買収事例から倍率を弾くのと同じ発想です。
大谷選手の契約直前、ヤンキースのアーロン・ジャッジ選手が「9年3億6000万ドル」の大型契約を結んでいました。
ジャッジ選手のWAR推移をベースに同じシミュレーションを行うと、算出される金額はおよそ3億ドル。ところが実際の契約は3.6億ドル。シミュレーション値のおよそ1.2倍のプレミアムが乗っていたことになります。
これが、MLBにおけるスーパースター契約の「基準倍率」です。並外れた成績を持続的に出せるトップ選手には、パフォーマンス予測値に加えて約20%の希少性プレミアムが上乗せされる、というのが直近の相場観だといえます。
さらに「二刀流ボーナス」が乗せられる
では、この1.2倍を大谷選手にそのまま当てはめればいいのかというと、そうではありません。ジャッジ選手はあくまで「打者としての歴史的スター」ですが、大谷選手は打者としても投手としても一線級で稼働する、事実上MLB史上に前例のない存在です。
打者としても投手としても契約の対象になり得る選手には、通常の希少性プレミアムを超える倍率が加算されるべきだと本書は分析します。








