写真:大谷翔平選手大谷翔平選手 Photo:Meg Oliphant/gettyimages

大谷翔平選手のドジャース1000億円(約7億ドル)契約がマスコミをにぎわせている。なぜ大騒ぎになっているかについて、スポーツの価値ということを除外して、4つの視点から考えた。(名古屋商科大学ビジネススクール教授 原田 泰)

約7億ドルの契約だが
実質的には4.6億ドル?

 第一には、その金額の大きさである。評価額が10億ドル(約1500億円)を超えるスタートアップ企業はユニコーン企業と呼ばれる。アメリカには652社、中国には168社あるが、日本には7社しかない(The Complete List Of Unicorn Companies, November 2023, https://www.cbinsights.com/research-unicorn-companies)。

 ユニコーンとは神話に登場する動物だから、まれにしかない貴重なものという意味だ。日本ではあまりにも少ないから何とかならないかと政府が躍起になっているが、その取り組みはうまくいってない。

 一方、企業ではなく、また、10億ドルには足りないものの、大谷の評価額(約7億ドル)はかなりユニコーン企業に近づいている。

 大リーグのこれまでの最高契約額はマイク・トラウト選手の12年4.27億ドルだから、大谷選手がこれを大きく上回って歴代最高となっているが、そこまで言えるかどうか多少疑問がある(日々の為替レートは変動するので、ここからはすべてドルで書かせていただく)。

 というのは、大谷選手の場合、契約額の97%が10年後の後払いだからだ。10年7億ドル(2024~33年)の契約だが、大谷選手の年俸は年200万ドルずつ、10年で計2000万ドル。あとの6.8億ドルは、2034~43年に繰り延べされ、毎年6800万ドルずつ払われる。

 10~20年後のお金は当然、目減りする。デフレの日本ではあまり感じられないが、アメリカでは確実に目減りする。目減りする率は、毎年4.435%とされる(数字の根拠は後述)。

 すると、6.8億ドルは10年後、1.04435の10乗で割った4.4億ドルとなる。大谷選手の契約額は、これに前述の2000万ドルを足して10年4.6億ドルとなる。すなわち、契約金額は7億ドルではなくて、実質4.6億ドルということになる。

 もちろん、これでも大リーグ史上第1位の契約額である。なお、山本由伸投手も12年3.25億ドルの契約で、これは第11位の契約である。WBCで大リーグ選手相手には投げたものの、大リーグでは1球も投げていない投手に対しては、破格の評価と思われる。