「人を見る目がある上司」が見ているポイント・ベスト1Photo: Adobe Stock

自分に対してだけは抜群の忠誠心を見せ、有能そうに振る舞う若手を「将来有望だ」と高く評価している上司がいる。一方で、社内の誰に対しても分け隔てなく誠実に向き合い、人知れず絶大な信頼を味方につけている若手を見抜く上司もいる。17万人のデータが教える、本当に抜擢すべき部下とは?(構成/ダイヤモンド社・石井一穂)

「人を見る目」がない人が評価してしまうポイント

上司である自分にいつも笑顔で接し、役員やキーマンの前では実に見事なプレゼンを披露する若手社員がいる。

「社内の重要人物をしっかり巻き込む力がある」
「要領が良く、成果を出すための立ち回りがうまい」

こうした「上に気に入られる世渡りのうまさ」をリーダー候補の素質として高く評価し、引き上げたくなる上司は多い。

だが、ここには大きなデメリットが隠されている。

自分の評価に直結する相手にだけ熱心に媚を売り、そうでない相手を軽視している人ほど、見えないところで傲慢な態度をとり、組織の土台を静かに崩壊させていることが多い。

そのまま昇進させると、役職という権力を手に入れた途端、部下や他部署を威圧的に見下し、協力関係を一切築けない「孤立したチーム」を作り上げてしまう。

自分の上司が、自分や現場をないがしろにして「上」の機嫌ばかり伺っていたら、誰だって嫌になるのは当然だ。

結果として「現場の不満が爆発し、離職者が増える」という最悪の事態を招きかねない。

「人を見る目がある上司」が見ているポイント

では、実際に評価され、昇進しているのは、どんな人たちなのだろうか。

815社のビジネスパーソン17万人の行動記録と評価データを分析したところ、意外な結果が見えてきた。

自らの損得に関わらず、組織を影で支える全ての人に対して一貫した敬意を払っている人が、将来を期待され、評価されていたのだ。

調査によると、期待されている人たちの28%が、清掃スタッフや警備員などに名前つきで挨拶しているようです。一般社員における比率の8.5倍と、大きな差がありました。
 

多くの人は、心の中で感謝はしているけれどわざわざ声をかけるのは照れくさい、あるいは忙しいから仕方ないと自分に言い聞かせて、挨拶せずに通り過ぎるだけです。
 

この違いが、他者に敬意を払う姿勢の差となって伝わり、周囲からの評価を左右していたのです。
――『815社17万人を分析してわかった 会社から期待されている人の習慣115』(越川慎司 著)より

「たかが日常の挨拶、それも、評価者ではない人を相手に。それで評価が変わるはずがない」

そう思うだろうか。

しかし、誰の目にも留まらないような場所だからこそ、その「相手を一人の人間として認める行動」が、彼らの評価を上げているのだ。

ある外資系企業の営業社員から、面白いエピソードを聞きました。彼は毎朝、清掃スタッフに「◯◯さん、おはようございます」と名前を呼んで挨拶していたそうです。すると半年後、そのスタッフから「社長が毎朝必ず8時にこのフロアを巡回している」と教えてもらいました。
 

そこで彼は、タイミングを合わせて毎日社長に挨拶するようにしたところ、後日、昇進面談の場で「現場で誰にでも丁寧に声をかけているらしいね」と言われたそうです。たった一言の挨拶が、大きな評価につながりました。
 

組織論の観点では、経営企画部や社長室のように情報を握っている部署とは、直接つながるよりも、こうした裏方を経由する方がむしろ接点を得やすいと言われています。
――『815社17万人を分析してわかった 会社から期待されている人の習慣115』(越川慎司 著)より

自分の利益になる相手にしか敬意を払えない人は、その姿勢を、自分の部下にも押し付けてしまう。

「私がこれだけ上を見て仕事をしているのだから、部下も私を立てるのが当然だ」

無意識のうちにそう考えてしまう。

結果として、本当に組織を支えている現場のメンバーから愛想を尽かされ、チームは空中分解していく。

本当に「人を見る目」がある人は、自分へのアピールや敬意だけを評価しない。

その人の、「他者に対する向き合い方」そのものを見ているのだ。

(本稿は、越川慎司著『815社17万人を分析してわかった 会社から期待されている人の習慣115』の一部を引用したオリジナル記事です)

越川慎司(こしかわ・しんじ)
株式会社クロスリバー 代表取締役社長
日系通信会社や外資ベンチャーなどを経て2005年にマイクロソフト米国本社へ入社。その後、日本マイクロソフトの役員としてExcelやPowerPointなどの事業責任者を務める。2017年には週休3日・複業を実践する会社、株式会社クロスリバーを設立し、800社以上の働き方改革を支援。年300回以上提供する企業向けオンライン講座の受講者満足度は平均96%、行動に移す受講者は95%以上。著書は『世界の一流は「休日」に何をしているのか』(クロスメディア・パブリッシング)や、『AI分析でわかった トップ5%社員の習慣』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など33冊、累計130万部。NHK、TBS、テレビ東京、PIVOT、NewsPicksやReHacQなどメディア出演多数。