「昇進させてはいけない若手」の正体・ベスト1Photo: Adobe Stock

優秀で仕事もできて、誰よりも必死に仕事に打ち込み、つねに忙しそうにしている若手を「頼もしい」と評価している管理職は多い。しかし、その評価は適切なのだろうか? 815社のビジネスパーソン17万人の行動記録と人事評価データを分析してわかった、各社が「本当に評価している人たち」の意外な特徴を明かそう。(構成/ダイヤモンド社・石井一穂)

「いつも忙しそうな人」を評価してはいけない

頭がよく、仕事ができて、いつも結果を出す。
しかし、眉間にしわを寄せ、いつも忙しそうにしている若手がいたとする。

「誰よりも多くの案件を抱えて必死に戦っている」
「あの責任感とハングリー精神は素晴らしい」

こうした「必死さ」や「ストイックさ」を、仕事への熱意や有能さの証拠として高く評価し、引き上げたくなる管理職は多い。

だが、ここには大きなデメリットが隠されている。

自分の忙しさやストレスを周囲に隠さず、張り詰めた空気を出している若手ほど、周囲に無言のプレッシャーを与え、チームの人間関係や協力体制に障害を与えてしまうことが多い。

「必死に頑張っている若手」を昇進させると、不機嫌なオーラで周囲を威圧し、メンバーが萎縮して相談すらできない「風通しの悪い組織」を作り上げてしまう。

「自分一人で成果を出す」ことに優れている人が、「チームに結果を出させる」ことにも優れているとは限らないのだ。

結果として「チームが機能せず、優秀なメンバーから順に去っていく」という最悪の事態を招きかねないのである。

実際に「昇進している」のは、どんな人?

では、実際に早く昇進し、組織のリーダーとして活躍しているのは、どんな人たちなのだろうか。

815社のビジネスパーソン17万人の行動記録と評価データを分析したところ、意外な結果が見えてきた。

昇進が早く、将来を「期待されている人」たちは、自分の感情を周囲に撒き散らすことなく、常に機嫌のよい状態をキープしていたのだ。

会社から期待されている人たちは、常に「機嫌がよい状態」をキープするよう心がけています。
 

とくに顕著だったのが、会議のときです。218社で計3万2,000時間の社内会議を記録し、AIによる感情分析をしたところ、期待されている人の65%は会議時間の60%以上でポジティブな感情を表出しているとわかりました。
 

忙しくても、トラブルが起きても、後輩にプロジェクトを取られても、朝の電車が遅れても、体調がいまいちでも、口角を少し上げ、機嫌のよい「ふり」をし続けるのです。
――『815社17万人を分析してわかった 会社から期待されている人の習慣115』(越川慎司 著)より

どれほど過酷な状況であっても、彼らは周囲が話しかけやすい「フラットな空気」を演出し続けているのだ。

なぜなら、不機嫌でいることにはデメリットしかないからだ。

とくに、他者との共同作業に大きな悪影響を与える。

17万人を調査したところ、働いている全時間の87%が他者の協力を要する仕事をしている時間であるとわかりました。
ここには期待されている人とそうでない人に差は見られませんでした。

 

ところが、507社のオフィス行動データを分析したところ、同僚から「あの人は忙しそう」と2か月に1回以上言われている人は、働いている時間の72%しか共同作業をしていないとわかりました。
――『815社17万人を分析してわかった 会社から期待されている人の習慣115』(越川慎司 著)より

「どんな仕事をするか」より、「誰と仕事をするか」で評価する

つまり不機嫌で忙しそうに振る舞うことは、周りからの評価を下げ、必要な協力を得られなくなり、仕事を一人で抱え込むことにつながるのだ。

当然、仕事の成果にも悪影響を及ぼす。

実際、評価者の本音を見ると、一緒に働くメンバーへの配慮、すなわち「感情のコントロール」こそが、リーダーとしての適性を測る最大のリトマス試験紙になっているようだ。

評価を決める管理職にも聞いたところ、「どんな仕事をするかより、誰と仕事をするかを重視する」と答えた人が6割を超えていました。
 

期待される人たちは、一緒に働きたいと思わせる力も重要な評価項目であると理解しているのです。
――『815社17万人を分析してわかった 会社から期待されている人の習慣115』(越川慎司 著)より

自分の感情すらコントロールできない人は、他人の感情に寄り添うこともできない。

「私がこれだけストレスを抱えて耐えているのだから、部下も耐えるのが当たり前だ」

無意識のうちにそう考えてしまう。

結果として、トラブルの報告は遅れ、協調関係は崩壊していく。

どれほど優秀に見えても、忙しさを盾に不機嫌なオーラを周囲に振りまく人は、昇進させない方が賢明だろう。

(本稿は、越川慎司著『815社17万人を分析してわかった 会社から期待されている人の習慣115』の内容を抜粋・編集した記事です)

越川慎司(こしかわ・しんじ)
株式会社クロスリバー 代表取締役社長
日系通信会社や外資ベンチャーなどを経て2005年にマイクロソフト米国本社へ入社。その後、日本マイクロソフトの役員としてExcelやPowerPointなどの事業責任者を務める。2017年には週休3日・複業を実践する会社、株式会社クロスリバーを設立し、800社以上の働き方改革を支援。年300回以上提供する企業向けオンライン講座の受講者満足度は平均96%、行動に移す受講者は95%以上。著書は『世界の一流は「休日」に何をしているのか』(クロスメディア・パブリッシング)や、『AI分析でわかった トップ5%社員の習慣』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など33冊、累計130万部。NHK、TBS、テレビ東京、PIVOT、NewsPicksやReHacQなどメディア出演多数。