そんな自分を、ムチで叩く必要はありません。まずは「今日1日、自分はこれだけエネルギーを使ったんだな」と、バッテリーが減ってしまっていることを認めてあげましょう。

焼きたてクッキーを使った
少し意地悪な実験

 意志の力が、「気合い」の有無とは関係なく、状況によって驚くほど発揮できたり、反対に発揮できなくなることを印象的に示した研究があります。心理学者ロイ・バウマイスターたちが行った、少し意地悪だけど忘れがたい実験を紹介しましょう。

 実験室に集められた学生たちは、まず甘い香りに包まれます。部屋の中には、焼きたてのチョコレートチップクッキーの香りが漂い、思わずお腹が鳴ってしまいそうになります。テーブルの上には2つの皿が置かれていました。1つには、チョコレートチップクッキーが山のように盛られ、もう1つには、泥を落としただけの生のラディッシュ(二十日大根)が無造作に並んでいます。

 学生たちは2つのグループに分けられました。一方のグループは、「ラディッシュだけを食べてください。クッキーには手を出さないでください」と指示されます。目の前に魅力的なお菓子があるのに、それを我慢して、苦くて硬いラディッシュをかじらなければなりません。もう一方のグループは、好きなだけクッキーを食べてよいと言われました。こちらの学生たちは、甘い香りに包まれながら、満足そうにお菓子を口に運びます。

 どちらのグループもしばらく過ごしたあと、次の課題であるパズルに挑戦することになります。実はそのパズルは、どれだけ工夫しても解けないように作られた、いわば「いじわるなパズル」でした。

 なぜこうしたパズルが用いられたのか。それは、研究者はパズルが解けるかどうかを知りたかったわけではないからです。この実験では、簡単に解けないとわかってから、どれくらい粘り強く取り組み続けられるか――つまり「あきらめずにがんばり続ける力」がどれほど残っているかを調査していたのです。