佐藤優 知を磨く読書写真はイメージです Photo:PIXTA

最前線で働くビジネスパーソンが押さえておきたい、時代の変化とその背景を理解する上で欠かせない注目書籍を作家で元外交官の佐藤優さんが厳選する。近代文語文を大学入試で出題する深い理由と「最高の参考書」とは?外国語能力が間違いなく向上する最新の勉強法とは?年齢も学歴も職歴も誇張して延々と話すシニアの背景とは?『近代文語文 問題演習』『英単語「1万語」習得法』『ルポ 過労シニア』の3冊から「ここだけは読んでほしい重要な箇所」を紹介する。(作家・元外務省主任分析官 佐藤 優)

大学入試で近代文語文を
出題する深い理由

 日本の新聞や雑誌の書評は、「名著で読む」とか「古典を読む」といった留保条件が付いている場合を除き、3~4カ月以内に刊行された新刊書を扱うのが慣習になっている。

 この連載でもこの慣習を基本的に踏襲するが、新刊書以外でも「知を磨く」というテーマに適切なものがあれば、紹介する。ただし、古本屋でしか購入できないものは避け、書店で普通に買えるものに限定する。

 最近、ビジネスパーソンや大学生から、「大正時代や昭和20年代初頭までに出た本は、近代文語文で書かれていて読むのが難しいのですが、なにか良い参考書はありませんか」という質問をよく受ける。その際に評者が紹介するのが川戸昌・二宮加美著『近代文語文 問題演習』だ。受験参考書であるが、社会人や大学生にも役に立つ。

川戸昌・二宮加美著『近代文語文 問題演習』駿台文庫、2009年4月刊行川戸昌・二宮加美著『近代文語文 問題演習』駿台文庫、2009年4月刊行

〈一橋大学・早稲田大学(文化構想学部)・上智大学(経済学部)が、今時流行らない近代文語文を出題する理由は、自分たちが確立したアイデンティティを学生たちに発展させていってほしいからです。つまり、近代文語文を出題する大学側としては、自分のところでぜひとも学びたいという、やる気に溢れた学生に来てほしいわけです。

「そういうことなら、やってやろうじゃないか」と発奮されたみなさん! 実は、腰をすえて準備さえすれば、近代文語文はそれほど恐ろしいものではありません。ふだん見慣れた文章でないことは確かですが、明治期の文化人たちが工夫して作った新しい「論理的文章」です。これが現代の論文・評論文の土台となっていることもあり、出題する大学(学部)は「専攻が何であれ、その方面の論文に立ち向かえる力を持った学生を求む」ともアピールしているのです。

 近代文語文の読解は、その性質上、古文の素養も必要とします〉

 本書に収録されている森鴎外「洋学の盛衰を論ず」、中江兆民「考へざるべからず」などの論考は現代でも通用する深い内容だ。近代文語文を習得すると読者の知的空間が飛躍的に広がる。