結果ははっきりと分かれました。お菓子を好きなだけ食べていた学生たちは、平均して20分ほど、パズルに取り組み続けました。ところが、甘いものを我慢してラディッシュを食べていた学生たちは、平均して8分ほどで「もう無理だ」とあきらめてしまったのです。

我慢を続けた後には
頑張る力が残りわずか?

 この違いを、「ラディッシュ組の学生は根性がなかった」と考えるのは、あまりにも酷でしょう。研究者たちが示したかったのは、そういうことではありません。彼らが注目したのは、「お菓子を我慢する」という行為そのものが、その後の粘り強さに影響を及ぼしうるという点です。

 ラディッシュを食べていた学生たちは、パズルに取り組む前の時点で、すでに「食べたい」という欲求を抑えるために意志のバッテリーを使っていました。そのために、パズルの課題で使える「我慢する意志の力」が残っていなかった可能性がある――この実験は、そうした見方を強く示唆しているのです。

 もちろん、「バッテリー残量」のように意志の力を測れるかどうかについては、いまも研究中で、議論の余地があります。それでも確かなのは、我慢や緊張が続いたあとに、頑張ろうとすると、それが負担に感じられやすい、ということです。

 学校で苦手な先生の前で愛想よく振る舞ったとき。ダイエット中に、友達が食べているポテトチップスをぐっとこらえたとき。部活で理不尽な練習メニューを、文句を飲み込んでこなしたとき。こうした1つひとつは小さな出来事に見えますが、どれも「お菓子を我慢する時間」と同じなのです。

 こうした我慢が続いたあとに、机に向かって勉強しようと思ったのに集中が続かなかったとしても、意志が弱いのではなく、すでに心のエネルギーを使いきっているからだ、と考える方が自然です。だからこそ大切なのは、「もっと気合いを入れろ」と自分を追い込むのではなく、「今の自分にはどれくらい余力が残っているだろう」と一度立ち止まって、自分の状態を見つめることなのです。