笑顔でガッツポーズをする男性写真はイメージです Photo:PIXTA

目標を途中でやめたり、別の道を選んだりすると、「逃げた」と自分を責めてしまいがちだ。しかし心理学の研究では、長く挑戦を続けられる人ほど、状況に応じて上手に「切り替え」や「棚上げ」を使っていることがわかっている。心の負担を減らし、再挑戦への意欲を保つための思考法とは。※本稿は、心理学者の外山美樹『「がんばれない」心で何が起きているか』(筑摩書房)の一部を抜粋・編集したものです。

挑戦し続けられるのは
上手に切り替えられる人

 1つの目標を手放したり、別のやり方に切り替えたりすることに、私たちはどうしても「逃げ」というイメージを重ねてしまいます。「苦しい場所から離れるのは弱さだ」「ボロボロになっても踏みとどまることこそが強さだ」……。さまざまなところでそんなふうに刷り込まれてきたからです。

 しかし、心理学の研究は、私たちのこの直感を心地よく裏切ってくれます。研究によって、「上手に切り替えられる人」のほうが、結果として誰よりも長く、粘り強く挑戦し続けられることが明らかになったのです。シンガポール国立大学で行われた、ネオとチェンによる興味深い実験を紹介しましょう。

 参加者に難しい課題に取り組んでもらう際、2つのグループに分けました。1つ目のグループは、「今の課題を続けるか、完全にやめるか」の二択しかない環境です。2つ目のグループには、今の課題が行き詰まったら「別の課題に切り替えてもいい」という選択肢(スイッチの権利)が与えられました。

 実験が始まると、面白い光景が見られました。逃げ道のないグループの人たちは、1つ目の問題に行き詰まると「もうダメだ、自分には才能がない」と落ち込んでしまい、すぐに作業自体を投げ出してしまいました。