ところが、別の課題という選択肢があるグループの人たちは1つ目の問題が難しいとわかると、「よし、今はこれじゃない。次に行こう!」と、まるでゲームのステージを選ぶように、軽やかに次の課題にチャレンジしたのです。

 その結果、1つ目の課題に粘る時間は短くても、「挑戦し続けた合計の時間」は、切り替えができたグループのほうが圧倒的に長くなりました。彼らは集中力も意欲も切らさず、最後まで生き生きと課題に取り組んでいたのです。

切り替えの自由があることで
遠くの景色を見ることができる

 この結果は、とても重要なことを示唆しています。切り替えの自由があることで、「ここで行き詰まっても別の道がある」という安心感が生まれ、1つ目の課題の失敗が「終わり」ではなく、ただの「移動」に変わるのです。その結果、あなたの心には、次の挑戦に向かう余裕がうまれます。

 切り替えることは投げ出すことではありません。燃え尽きることなく、遠くまで歩くための「持続戦略」なのです。すべてを1つの道に賭けてうまくいかず、心がポキッと折れてしまうよりも、複数のルートを軽やかに行き来しながら進むほうが、ずっと遠くの景色を見ることができます。

 スイッチする勇気。それは、自分のエネルギーを賢く配分しながら挑戦を続けていくための、「しなやかな強さ」の証なのです。

切り替えるのが難しいなら
棚上げしてしまえばいい

「切り替えるのが大事なのはわかった。でも、やっぱりそう決めるのは勇気がいる……」。そう感じるのは、あなたがそれだけ誠実に物事に向き合ってきた証拠です。特に真面目な人ほど、「途中で投げ出すのは無責任だ」という思いが強くなって、身動きが取れなくなってしまいます。

 そんなときに試してほしいのが、心理学が教えてくれる「第三の選択肢」です。それは、完全に断念するのではなく、いったん「置いておく(棚上げする)」という選択です。

 ドイツの心理学者マイヤーとフロイントは、私たちが複数の目標の間で板挟みになったとき、どうすれば心が守られるのかを調べる実験を行いました。