冷気は足元にたまりやすい
集中力を乱す一因に

 しかしここで注意しなければならないことがある。冷気は重いので足元にたまりやすい。床付近が低温環境になることで人によっては自律神経が過度に緊張状態になり、仕事の能率を落とすことが伊香賀氏らの研究でわかっている。

「大学生を対象に、足元が寒いオフィスで自律神経の状態(交感神経活性度)を調べました。すると基礎代謝が低い傾向にある女性は、低温環境で足の甲の皮膚温が頭部と比べて2℃ほど低下してしまうのです。寒さを感じると、体は末端の血管を収縮させて血の巡りを悪くし、体温を逃がさないような自己防衛を働かせますが、それによってイライラするなど集中力を乱してしまうのです」

 一方で男性の場合は、基礎代謝が高いためか、足元の温度の下がり方が“耐えられるレベル”だったという。そして実験対象者に計算問題(ナンバープレース)とマインドマップ(創造作業)を行わせると、「基礎代謝が低い人はナンバープレースの成績が悪い」結果であった。

 この結果を踏まえて伊香賀氏は「企業経営者はテナントオフィスを借りるとき“賃料の安さ”だけで決めてはいけません」と指摘する。

「同じ立地でも、断熱性能や日よけがきちんとされている建物は、工事費が高いので賃料も高めになるわけですが、結果的にはそのほうが社員の仕事効率が高まり、会社の業績が上がるということです」

快適な室温を保つには
「断熱性能」と「日よけ」がポイント

 実は経営者が職場環境を良くしようと、先の「最も作業効率のいい25.7℃」にしようとしても、エアコンが「設定温度通りの室温」に働くには、建物の設計がきちんとしていなければならないのだ。

 快適な室温を維持できる、良い建物であるかどうかの見極めは、「断熱性能」と「日よけ」である。

 断熱性と気密性は切り離せない関係にある。