「専門家の運用だから安心です」は
本当に信用できるのか

「投資信託は専門家が運用するので安心です」

 投資信託の特徴について言い表す際、少額投資と分散投資に加え、もうひとつよく言われるのが、この「専門家運用」です。

 専門家が運用するから安心という言葉には、嘘はないと思います。ただ、多くの個人の方とお話しして、時々はっとさせられるのは、「専門家による運用だから、自分たちが運用するよりも高いリターンが得られるはず」と思い込んでいることです。

 これはすべての投資信託について言えることですが、専門家の専門家たるゆえんは、銘柄当ての上手・下手ではなく、あくまでもファンドに組み入れられている資産の管理をしっかり行なっているかどうかで決まるということです。

 投資信託は、さまざまな国・地域の、さまざまな株式や債券を組み入れて運用しています。国によっては、日本がまだ真夜中の時間帯に取引が行なわれているところがありますし、数十、数百という銘柄の価格動向を時々刻々とモニタリングして、組入比率のバランスを取り続けるということを個人レベルで行なうのは、不可能です。そういう資産の管理をしっかり行なってくれるからこそ、運用管理費用というコストを負担してでも、投資信託を購入するメリットがあるということです。

 もちろん、きちっとした資産管理を行なった結果として、良い運用実績がもたらされることもあります。でも、それはあくまでも結果論ですし、最初から銘柄を当てにいくという姿勢で運用を行なっているファンドマネジャーは、皆無といっても良いでしょう。そもそも投資信託という金融商品は、専門家の儲かる銘柄を当てる能力を買うのではなく、資産管理のノウハウを買っていると考えるべきなのです。

 投資信託の損益を左右する最も大きな要因は、マーケットの動向です。つまり、いくら専門家が運用しているといっても、投資先マーケットが大きく下落するなかで、それに逆行する形で高い運用成績を収めることは、まず不可能です。