金融機関の窓口の人たちは
「販売のプロ」であり、運用はしていない

 さらに言えば、実際に皆さんが投資信託を購入する際に、購入手続きなどをしてくれる金融機関の販売担当者も、前回お話したように、決して運用のプロではありません。販売のプロです。

 実は、この点を誤解している人も、非常に多いのです。これは、投資信託のしくみを理解すれば、いかに誤解しているかということが分かるのですが、販売金融機関が投資信託を運用していると勘違いしているケースが、意外と多いのです。

 投資信託は、証券会社や銀行などの販売金融機関を通じてお金を集め、それを投資信託会社が運用するのですが、お金を集めている金融機関が運用していると思い込んでいる人が多いのです。その結果、販売金融機関の窓口で投資信託の商品説明をしてくれる販売担当者のことを、運用の専門家であると誤解してしまうのです。

 「○×銀行で買ったから」といっても、その銀行が運用しているわけではないのです。

 販売金融機関は、あくまでも小売業に過ぎません。つまり販売のプロではあるかもしれませんが、過去において、運用の経験が一度もないという人が販売の最前線に立っているのです。

 もちろん、運用経験がないから投資信託を販売してはいけない、などと言うつもりはありません。ただ、投資信託を購入するのに販売担当者とやり取りをする個人は、販売担当者が運用のプロであるという誤解をしないように注意することが大事です。

 プロである販売担当者にとって、たいていは、顧客の資産を増やすということよりも、自分たちの手数料収入をいかに増やせるかが、興味の大半を占めています。したがって、投資信託を買いに来た人に対しては、聞こえの良い話しかしません。いくら「長期投資」が、資産形成にとってプラスだということを分かっていたとしても、それを口にすることはないでしょう。

 何しろ長期投資というものは、その効果が目に見えて分かるまでには長い時間を必要としますし、何よりも退屈なものです。少しでも多くの投資信託を買ってもらうためには、あるいは買ったり売ったりを繰り返す回転が早い商いをしてもらうためには、長期投資の有効性を唱えることはできないのです。
それよりも、目先で儲かりそうな話をして、どんどん新しいファンドに乗り換えてもらうということのほうが、販売金融機関の販売担当者にとっては、その都度、手数料が入ってくるのでメリットが大きいのです。

 ですから、投資信託会社の運用担当者(ファンドマネジャー)は、銘柄当ての専門家ではなく、あくまでも資産管理の専門家であるということ。そして、販売金融機関の窓口にいる販売担当者は、運用のプロではなく、あくまでも販売のプロであるということ。

 この2つの誤解さえしなければ、投資信託を購入する際に間違った誘導を受けて、自分の意図しないファンドを購入してしまうリスクを避けられるはずです。

(次回更新は8/21です)

中野晴啓(なかの はるひろ)
セゾン投信株式会社 代表取締役社長。公益財団法人セゾン文化財団理事、NPO法人「元気な日本を作る会」理事。1963年東京生まれ。1987年明治大学商学部卒、クレディセゾン入社。セゾングループの金融子会社にて資金運用業務に従事した後、投資顧問事業を立ち上げ運用責任者としてグループ資金の運用のほか、外国籍投資信託をはじめとした海外契約資産等の運用アドバイスを手がける。その後、(株)クレディセゾン インベストメント事業部長を経て2006年セゾン投信(株)を設立、2007年4月より現職。米バンガード・グループとの提携を実現、現在2本の長期投資型ファンドを設定、販売会社を介さず資産形成世代中心に直接販売を行っている。また、全国各地で講演やセミナーを行い、社会を元気にするための活動を続けている。『運用のプロが教える草食系投資』(共著・日本経済新聞出版社)、『20代のうちにこそ始めたいお金のこと』(すばる舎)、『30歳からはじめる お金の育て方入門』(共著、同文館出版)、『年収500万円からはじめる投資信託入門』(ビジネス社)ほか多数。

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