改革案を示した。あるべき姿を説いた。しかし現場はまったく動かなかった――そんな経験のある上司は少なくないだろう。ある本の著者自身の苦い失敗が、その原因を示している。

大きな変化が必要だ

壮大な計画が、現場を動かさなかった

家業を継いだ著者は、意気揚々と改革に乗り出した。
パワーポイントで中期経営計画を作成し、現場のスタッフを集めて会議を開き、
営業からバックオフィスにいたるまで数十の改革案を提示して、
あるべき姿を丁寧に説明した。

しかし結果は、全員がポカンとした表情を見せ、現場は1ミリも動かなかったという。
当時の著者は「なぜ理解してくれないのか」「レベルが低い」と憤り、
原因を現場のスタッフに求めてしまった。
しかし振り返ってみれば、間違っていたのは著者自身の側にあった。

「一度に大きな変化」を求めすぎると、現場は動けなくなる

コンサルティング会社を退職し、家業の牛乳屋を継いだ2013年。
私は意気揚々と改革に乗り出しました。
パワーポイントで壮大な「中期経営計画」をつくり、現場のスタッフを集めて会議を開き、営業からバックオフィスにいたるまで数十の改革案を作成して、あるべき姿を説きました。
結果はどうだったか。全員がポカンとし、私は「宇宙人が何か言ってるぞ」という目で見られ、現場は1ミリも動きませんでした。
当時の私は、「なぜ彼らは理解してくれないんだ?」「レベルが低いな」と憤り、他責にしてしまいました。
しかし、間違っていたのは私の方でした。
彼らが動けなかったのは、私が「一度に大きな変化(完璧な姿)」を求めすぎたからです。

現場が動けなかった本当の理由は、スタッフの能力やモチベーションの問題ではなかった。
上司が一度に大きすぎる変化を、しかも完璧な形で求めたことにあったという。
数十の改革案を同時に示されたとき、受け取る側には「何から手をつければいいか」がわからなくなる。
圧倒された状態では、どれだけ内容が正しくても、人は動けなくなってしまう。

上司の側には全体像が見えており、それを一気に共有しようとする気持ちはわかる。
しかし受け取る側にとって、一度に押しつけられた大量の変化は、
理解より先に混乱をもたらすことが多い。
「宇宙人が何か言ってるぞ」という視線は、スタッフの怠慢ではなく、
情報量と変化の量が処理できる範囲を超えていたことのサインだったと言える。

変化は、小さく分けて順番に求める

現場を動かすためには、求める変化の量と速度を、
受け取る側が処理できる範囲に収める必要がある。
壮大なビジョンを持つことは上司の役割として重要だが、
それをそのままの形で現場に渡すことと、現場が動けることは別の話だ。

「まず、この一点だけ変えてほしい」という形で伝え、
その変化が定着してから次のステップを示す――
この順番を守ることが、改革を実際に動かすための現実的な方法になる。
現場が動かないとき、その原因をスタッフの側に求める前に、
自分が求めている変化の量と速度を一度見直してみることが大切だ。

次に改革や変化を現場に求めるとき、まず「最初の一つだけ」に絞って伝えることだけでいい。

(本記事は、書籍『コンサル時代に教わった 仕事ができる上司の当たり前』をもとに作成しました)