目標を達成した部下が給与アップを求めてくる。しかし会社の実態は火の車――そのすれ違いの原因が、実は上司側にある場合がある。

目標を達成し続けたのに、利益は残らなかった
家業を継いで経営再建に取り組んだとき、「新規契約数の増加」を最重要課題に掲げた。
社員たちは懸命に動き、目標を達成し続けた。
しかし裏では解約が相次いでおり、
新規契約を積み上げても利益はまったく残らない状態が続いていた。
1年後、社員から上がってきたのは「目標を達成したのに、なぜ給料が上がらないのか」という声だった。
当時の著者は、会社が苦しいのに給与の話ばかりだと憤りを感じたという。
しかし振り返ってみれば、悪いのは自分自身だったと気づく。
地図を持たせずに「目的地に着け」と怒鳴るのと同じだ
社員たちは頑張り、目標を達成し続けました。しかし、裏では「解約」が相次ぎ、契約はザルに入れた水のようにあふれ、利益はまったく残っていなかったのです。
1年後、社員から突きつけられたのは不満の声でした。
「目標を達成したのに、なぜ給料が上がらないんですか? ボーナスは出ないんですか?」
当時の私は、「会社は火の車なのに、金の話ばかりしやがって」と憤りました。
しかし、悪いのは私です。現場の部下は「新規契約数」という情報しか与えられていなかったので、「契約を取った=会社が儲かった=給料が上がる」と考えるのは当然です。
一方、私の手元には「利益率」や「資金繰り」という絶望的な情報がありました。
情報格差がある状態で「経営者の苦しみを理解しろ」と強要するのは、地図を持たせずに「目的地に着け」と怒鳴るのと同じです。
現場の部下に与えられていた情報は「新規契約数」だけだった。
その情報だけを見れば、「契約を取った=会社が儲かった=給料が上がる」と考えるのは、
ごく自然な推論だ。
一方、著者の手元には利益率や資金繰りという、まったく異なる実態を示す情報があった。
この情報格差がある状態で、「経営者の苦しみを理解してほしい」と求めることは、
地図を持たせずに「目的地に着け」と怒鳴るのと同じだという。
部下が見えていない情報を上司だけが抱えている限り、
どれだけ頑張っても、部下の行動と会社の実態はかみ合わない。
部下の「的外れな反応」の多くは、情報不足から来ている
部下が期待外れな言動をしたとき、その原因を部下の意識や能力に求めてしまうことは多い。
しかし、この経験が示しているのは、
部下の反応は与えられた情報の範囲内で生まれているという事実だ。
おかしな判断や的外れな要求の背景には、
上司が共有していない情報が存在していることが少なくない。
「なぜわからないのか」と憤る前に、
部下が持っている情報と、自分が持っている情報の差を一度確認してみることが大切だ。
その差を埋めることなしに、部下に正しい判断や行動を期待することは難しい。
情報を共有することは、部下への信頼の表れであると同時に、
チームが同じ方向を向くための、最も基本的な前提条件になっていく。
部下の言動に違和感を覚えたとき、「自分が共有していない情報があるのではないか」と一度だけ立ち止まってみることだけでいい。
(本記事は、書籍『コンサル時代に教わった 仕事ができる上司の当たり前』をもとに作成しました)



