そんな最高裁の内側、裁判官たちの素顔に迫ったドキュメントが、この本です。著者本人も、連邦検事補だったことがあります。

 書名の「ナイン」とは、アメリカ連邦最高裁の判事の数のことです。日本の最高裁裁判官は15人で、定年は70歳と定められていますが、アメリカの連邦最高裁は日本より人数が少ない一方、定年はありません。本人が自ら辞任を申し出ない限り、死ぬまで務めることができるのです。事実、死去により交代のケースもあります。

 日本の最高裁裁判官は内閣が指名または任命します。任命された後、衆議院選挙の際に国民審査を受けますが、過去に不適格とされた人物はいません。最高裁裁判官は、裁判官、弁護士、有識者の3者から任命されますが、その際、極端に党派性を持った人が任命されることはありません。

 ところが、アメリカは違います。民主党あるいは共和党の党派性を強く帯びた人たちが選ばれています。

 アメリカの連邦最高裁の裁判官は、大統領が指名し、上院が承認して就任します。民主党の大統領も、共和党の大統領も、自分の政策に最高裁が異議を唱えないように、自分と同じイデオロギーを持っている人を指名するのです。それは上院も同じ。上院で多数派を占める党が承認した人だけが最高裁にたどり着きます。

『知の本棚』書影知の本棚』(池上 彰、新潮社)

 その結果、国論を二分するような論争の場合、5対4という僅差で決着することが多くなりました。保守派4、リベラル派4、中間派1で、中間派がどちらにつくかで結論が決まるのです(ただ、本書が出た後、現在は保守派6、リベラル派3となっています)。

 連邦最高裁判事といえども人間です。野心もあるし、弱さもある。プライドもあるし、迷いもある。この本では、そんな法律家の素顔が活写されます。

 日本の裁判とアメリカの裁判はどう異なるのか。日本の法曹関係者にとって興味深い資料になるはずです。

<ジェフリー・トゥービン『ザ・ナイン アメリカ連邦最高裁の素顔』増子久美・鈴木淑美訳、河出書房新社、2013年>