この事件の1カ月前、FBIの地方支局の捜査官は、ボーイング747の飛行訓練を受けながらも離陸にも着陸にも興味を示さないアラブ人がいることを把握。捜査の拡大を要請しますが、FBIの組織は動こうとしませんでした。巨大な官僚組織となったFBIは、テロ対策に失敗するのです。

 ところが、テロが起きると、一転して徹底した盗聴を再開します。何百万もの電話の通話記録を分析し、今度は電話ばかりでなく、インターネットでのメールのやりとりを盗み見るようになります。

 スノーデン元CIA職員はアメリカのNSA(国家安全保障局)の世界的な盗聴を暴露しましたが、FBIもまた、法律を無視して盗聴を繰り返していたのです。

 しかし、こうした違法行為も、この本の著者によって明るみに出ます。それが可能になったのは、政府の機密も、いつかはオープンにされるというアメリカの制度です。そこから国家権力への監視の目も育ちます。

 2013年、日本でも特定秘密保護法が成立しましたが、秘密保護の解除制度は、民主主義を支える上で必須であることを教えてくれます。

<ティム・ワイナー『FBI秘録 その誕生から今日まで(上・下)』山田侑平訳、文藝春秋、2014年>

NSAの極秘文書が明かす日米関係の真実
『暴露 スノーデンが私に託したファイル』

 元CIA職員のエドワード・スノーデンが暴露したアメリカの盗聴工作は、どのようにして行われていたのか。スノーデンから極秘書類を受け取り、新聞記事に書いたジャーナリストが、その全貌をまとめました。

 アメリカのスパイ組織としてはCIAが有名ですが、世界中の電話を盗聴したり、通信、インターネットを盗み見たりしているのはNSA(国家安全保障局)という巨大組織です。スノーデンは、アメリカ同時多発テロをきっかけに愛国心に燃えて軍に入りますが、負傷して除隊。CIAに誘われて入ったところ、その秘密工作の手法に失望。さらにNSAの違法行為も知り、暴露しようと考え、NSAの下請け企業に入社することで、内部の極秘文書を入手しました。