部下を傷つけないために、最初に良いところを伝えてから指摘する――そのやり方が、じつは指摘を届かなくさせている可能性がある。

「ポジティブ・ファースト」が推奨される理由と、その限界
指摘の仕方には大きく2つのパターンがある。
最初に褒めてから厳しい話をする「ポジティブ・ファースト」と、
最初に厳しい指摘をして最後にポジティブな言葉で締める「ネガティブ・ファースト」だ。
多くのマネジメント本では、前者が推奨されている。
相手を安心させてから本題に入ることで、防御反応を和らげる効果があるとされているからだ。
しかし、ビジネスの現場、特に上司と部下の間の信頼関係が問われる場面では、
ポジティブ・ファーストはあまり効果的ではないという見方がある。
その理由を、具体的な場面で考えてみるとわかりやすい。
告白の断り方が教えてくれること
ポジティブ・ファースト:最初に褒めて相手を安心させ、その後に厳しい話をする。
ネガティブ・ファースト:最初に厳しい指摘をし、最後にポジティブな言葉で締める。
多くのマネジメント本では「ポジティブ・ファースト」が推奨されますが、ビジネスの現場、特に信頼関係が重要な上司部下の間柄において、ポジティブ・ファーストは実はあまり効果的ではないと私は考えています。
想像してみてください。あなたが異性に告白をしたとします。相手はこう言います。
「ありがとう。あなたはいつも優しくて、一緒にいて居心地が良いし、素敵な人だと思う。……だけど、ごめんなさい、友達としか思えない」
前半のポジティブな言葉は、後半の「だけど」以降を言うための「単なる枕詞」に過ぎないことがバレバレです。
最初に良いことを言われると、相手は期待します。しかし、その後に厳しいことが伝えられた瞬間、前半の褒め言葉はすべて「ウソ」や「お世辞」に聞こえてしまうのです。
部下は敏感です。上司が褒め始めた瞬間に、「ああ、これは後で何か厳しいことを言われるな」と身構え、心のシャッターを下ろしてしまいます。これでは、肝心の指導が届きません。
告白を断るときの言い方がそのままで理解できる。
「あなたはいつも優しくて、居心地がよくて、素敵な人だと思う――だけど、ごめんなさい」
この構造では、前半のポジティブな言葉がすべて「後に来る言葉のための枕詞」に過ぎないことが、
聞いた瞬間にわかってしまう。
期待を持たせてから否定するという流れは、
前半の言葉をすべて「ウソ」や「お世辞」として上書きしてしまう。
職場での指摘でも、同じことが起きている。
上司が褒め始めた瞬間、部下の頭の中では「この後に何か厳しいことが来る」という予測が立つ。
そのまま心のシャッターを下ろしてしまい、
肝心の指摘が届かない状態になってしまう。
上司は伝えたつもりでも、部下の中には何も残らない――
その原因が、言葉の順番にあることが多い。
信頼関係があるほど、ポジティブ・ファーストは通じなくなる
初対面や関係が浅い相手であれば、最初に褒めることで場が和むこともある。
しかし、日々一緒に仕事をしている上司と部下の間では、
パターンはすぐに読まれてしまう。
「また褒めてから来るやつだ」と思われた瞬間、
前半の言葉はすでに機能を失っている。
信頼関係が深いほど、言葉の使い方に正直さが求められる。
褒め言葉を改善を伝えるための前置きとして使うのではなく、
褒めるときは純粋に褒め、指摘するときは正面から指摘する――
その切り分けができているかどうかが、
部下から見た上司の「信頼できる人かどうか」の判断材料になっていく。
次に部下を指摘するとき、最初に褒め言葉を置かず、改善点を正面から伝えることだけでいい。
(本記事は、書籍『コンサル時代に教わった 仕事ができる上司の当たり前』をもとに作成しました)



