民生品の受注を受けにくい会社も

 一方、こうしたプライム企業(防衛省から直接受注を受ける大企業)だけで装備品を作ることはできず、そこに連なっている数千社に及ぶ関連企業はまた事情が違います。

 装備品ごとにだいたい1000社以上のベンダー(プライム企業に部品等を提供し、防衛省とは契約を締結していない)中小企業が関わっていて、その数は、例えばF2戦闘機は約1100社、一〇式戦車は約1300社、護衛艦(DD)は約8300社と言われ、そこには有名な企業から町工場まで含まれています。

 ベンダー企業は、大手企業とは違って防衛需要依存度が高い場合が多く、ほとんど民需は行っていないというところもあります。その理由は、特殊な防衛装備品用の設備や技術者などは民生品用に流用できないという事情や、各経営者の防衛事業を担っているという責任感などです。ある会社では、受注が1年間ないという事態になり、そんな中で救世主のような民生品製造の仕事がきたというので家族は胸をなでおろしたのですが、結局それは辞退したそうです。驚いて理由を聞くと、自衛隊の装備品を作っている以上、保全の観点から防衛省関係者以外が出入りすることはやはり避けたいということでした。

 技術者も民生品部門とかけもちをすると「腕が落ちる」と言います。高度な技術力を維持するために人の流動を避けたいという声も多く聞きました。発注をしてくれなかったというのになんという忠誠心、なんというヤセ我慢なのかと驚愕するばかりですが、このような考え方は防衛産業では決して珍しくはありませんでした。こうした会社の多くは先代や先々代の社長が旧軍から仕事を受けた歴史を持っていて、その伝統を継承しているのです。

 しかし、世代交代で最近は考え方も変ってきている可能性があります。以前、このようないわゆる100年企業を訪ねた際、社長の息子さんが、受注があるのかないのか分からない防衛事業はいずれ畳んで、敷地の一部は駐車場にしたいと、こっそり打ち明けてくれたこともありました。

 問題なのは、防衛装備品の製造をしていることが必ずしも信用に繋がっていないということです。こうした町工場は、仕事がない間も設備や技術者の維持のために資金繰りをしなければならず、地元の銀行から融資を受けるわけですが、自衛隊の仕事をしているからといって地元の銀行は必ずしもいい顔をしません。

「今回限りですよ」

 そんな言葉を突き付けられた社長さんは少なくありませんでした。今は防衛費が増えていますので、銀行の防衛産業に対する見方も変化しているかもしれませんが、予算が増えたとしても、その企業の受注があるかどうかが不透明であれば、何の保証にもならないのです。

 いくら高い技術で防衛装備品を作っていても「予見性」、つまり見通しの立たない仕事をしていては信用に繋がりません。