多少失敗をしても
サプライズを楽しみたい
一方で、選ばない消費(編集部注/好みの曲を自動選曲してくれる音楽配信サービスなど、選択を人にゆだねることで、手間を省き意思決定のストレスを軽減しようとする消費行動を、筆者はこのように定義している)には、失敗を受け入れる姿勢が潜んでいます。
福袋のように中身を選べない商品について、1万円を支払ったのに5000円程度の内容だった場合には、かつては5000円損をしたとみなされていましたが、今ではSNS上で「ネタになる」「面白い」として共有され、むしろ失敗が喜ばれることさえあります。これは、金銭的な損を損とみなさないという新たな思考の広がりともいえるでしょう。
たとえば、YouTubeやTikTokでは「やってみた」「買ってみた」系の動画が人気を集めていますが、これらを見ると、予期せぬ結果に対するリアクションが視聴者の共感を呼んでいます。そこでは、失敗は責められるものではなく、「笑える」「あるある」と受け入れられ、楽しまれています。完璧な成功や効率の良さよりも、むしろ多少のズレや外れに親しみを感じる視聴者が多いのではないでしょうか。
この他、定期便でランダムに商品が届くサブスク型のサービスに対しても、中身に「完璧」さを求めない態度が見られます。そういったサービスにはコスメやお菓子、雑貨の「お楽しみボックス」などがありますが、SNSを見ると、「今回は微妙だったけど、そういうことも含めて楽しい」といった投稿も多くあり、期待したのとは違うことにがっかりするよりも、偶然性を楽しむ経験としてポジティブに捉えているように見えます。
こうしたサービスの主役である若者を対象とした意識調査を見ると、無理をせずに自然体でいられることに価値を置く傾向が強まっているようです。
職場の環境においても、自己実現よりも、ストレスが少ない職場や他人と比べずにいられる環境を重視する回答が目立ちます。こうした傾向もまた、「自分で積極的に選ばなくてもよい」「必要なときには任せてもよい」といった、主体性から離れた選ばない消費を加速させているように思います。
こうした、選ばないことに対する寛容さは、消費にとどまらず、社会全体の思考スタイルにも変化をもたらしているのかもしれません。
『選ばない消費 AI時代の暮らしと価値観』(久我尚子、集英社)







