「おいしくて安くて満足!」なのにもう一度行く気になれない店のたった一つの共通点とは?写真はイメージです Photo:PIXTA

あらゆるモノやお店、ブランドが溢れている現代で、似たような商品や飲食店でも「選ばれるお店」と「選ばれないお店」がある。また「選ばれても一度きり」の場合もある。消費者に選ばれるモノと選ばれないモノの差は、一体どこで生まれるのか。ブランディングの専門家が解説する。
本稿は、川上徹也『ストーリーブランディング 100の法則』(日本能率協会マネジメントセンター)の一部を抜粋・編集したものです。

頭で買う(理性的消費)か
心で買う(感情的消費)か

 人が買い物をしたりサービスを利用したりする時、大きく分けると二つの買い方があります。「頭」で買う(理性的消費)か、「心」で買う(感情的消費)か、です。

「理性的消費」とは、実用性、利便性、知名度などを重視して選ぶ買い方。「価格」と「品質」のバランスを考えた、「合理性」で買う消費といえるでしょう。普段の買い物や食事などは、こちらの消費スタイルを取る人が多いかもしれません。いわゆる「コスパがいい」というような買い方は、こちらの消費スタイルです。

 ただすべて理性的で合理的な買い物をしているだけだと、人は心が乾いてしまいます。人は時として、不合理な消費をします。「感情的消費」とは、理性で考えると役立つものではないし、ちょっと高かったりするのだけれど、なぜか欲しくなり買ってしまう消費スタイルのことをいいます。たとえば以下のようなケースです。

・没頭している趣味に関する物を買う時
・推しているアーティスト・アイドルなどに関連した商品(CD、写真集、グッズなど)を買う時
・ファンであるスポーツチームのチケットやグッズを買う時
・ブランドもののバッグやアクセサリー、高級車や高級時計などを買う時
・記念日などにちょっと奮発しておしゃれなレストランで食事をする時
・旅行先の空港や駅でお土産を買う時
・テレビショッピングで言葉巧みにダイエットグッズなどを紹介された時

 他にも、多くの人は以下のような体験をしたことがあるのではないでしょうか?

「実用的ではないんだけれど、ある商品に一目惚れしてしまった」
「うまく説明できないけれど、どうしてもこの商品が欲しい!」
「理由は特にないけれど、週に一度はあのお店に通いたくなる」
「なぜかわからないけれど、どうせならあの営業担当から買いたい」

 これらはすべて「感情的消費」です。

 あなたのお店や会社が、大企業やチェーン店でなければ、何らかの「感情的消費」を目指すべきでしょう。「理性的消費」では、規模が大きい方が圧倒的に有利で、小さな会社やお店では勝負にならないからです。あなたが営業パーソン、販売員、士業、コンサルタントなどでも同様です。「理性的消費」を目指している限り、ライバルとの差別化は難しいからです。

 この「感情的消費」を目指す時に有力な手段が「物語(ストーリー)」を活用することなのです。なぜなら人間の感情を一番揺さぶるのは「物語」だからです。