そもそも、出社回帰について外部の人間が、とやかく批判することに意味はあるのだろうか。先に述べた通り、会社の方針に納得できなければ従業員は流出するだろうし、人材が流出しすぎて事業が成立しなくなった企業は自然淘汰されるのみ。ブランドイメージを落とした企業から、競合他社がより良い条件で人材を引き抜くなんてことは今まで何度も繰り返されてきた。

 出社回帰の理念に共感して社員がとどまるなら、それも素晴らしい。出社回帰して、魅力的な給与体系や素晴らしいオフィスを提供することで社員がむしろ歓迎するかもしれない。

AI時代における仕事の効率化とは?
新しい働き方に評価は追い付いているか

 閑話休題。このところ、企業の幹部からAIに関する相談を受ける機会が急増している。事業の難しい相談ではなくて、「部下がAIを使わないんですよ。生産性を高めてほしいのに」といったお悩み相談だ。

 私が、「ところで、その社員はKGI(重要目標達成指標)やKPI(重要業績評価指標)を未達成なのですか」と質問すると、「いや、そういうわけではないのですが」と返ってくる。「では、社員からするとAIを使うメリットはなんでしょうか? だってAIを使わなくても評価は変わらないのでしょう」と返すと、相手は絶句してしまう。何度かこういう会話をした。

 ところで、実際にあった「ボブ事件」を知っているだろうか。米国の重要インフラ企業で働いていたプログラマーのボブ(仮名)は、社内では優秀だと評価されていたが、実は自分の仕事を年収の2割の金額で、中国の外注会社に丸投げしていた。アクセスするには物理的なトークンが必要だったが、国際便で送る周到ぶりだった。そうして勤務時間中、ボブはネットニュースと猫動画を眺めていた。

 結局最後は悪行がバレたわけだが、私はこの話を聞いたとき、笑いながら考え込んでしまった。もちろん情報の漏洩だとか、機器の第三者貸与などは大問題だ。ただ、ボブは年収の2割で仕事を代替させることで、自分の生活を豊かにしていた。ある意味で仕事を効率化していた。何だか痛快だから、「究極のサボり」として世界中で笑い話になっているのではないか。

 出社回帰というトレンドの話に戻ろう。結論、私はリモートワークだろうがフル出社だろうが、働く人が課されたミッション、KGIやKPIなどを達成していればいいと思う。AIを使わない社員を嘆く暇が合ったら、管理職は、自社の評価指標の不備を役員に教えたほうがいい。

 もちろん私の考えもひとつの意見にすぎない。上場企業であれば、最終的に企業の価値を最大化させたかは、株主の判断もあるだろう。外野はさまざまに批判したがるが、出社回帰した企業の株価が数年後にどれくらい上がっているか、ランキングなんてあればぜひ見てみたいものだ。