企業・ベンダー・コンサルが激変!DX2025 エージェントAIが来る#7Photo:nidone_tyo & Midjourney

クリエーティブ分野にAIを使うことがさまざまな文脈で話題を呼んでいる。その中で、日常的にクリエーティブ業務を行っている広告代理店やゲーム業界はAIをどう使うのか。電通とコロプラでは、ベテランクリエイターの知見をAI化して実際の事業に生かしているという。その狙いはどこにあるのか。特集『DX2025 エージェントAIが来る』(全21回)の#7では、AIとクリエーティブが作るものの可能性について考えてみよう。(ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)

レジェンドクリエイターが「AI」になってゲームに登場
コロプラのAIゲーム「神魔狩りのツクヨミ」

「また金子さんのゲームが遊べるとは思ってなかった」

 人気ゲーム、真・女神転生シリーズで知られる伝説のゲームクリエイター、金子一馬氏がコロプラで作った完全新作ゲームが話題を呼んでいる。なんと金子氏がAIとなった「AIカネコ」がゲーム内に登場するのだ。

 仮想世界のタワマンを舞台にした、ローグライク(プレイするごとにダンジョンのマップやアイテム配置がランダムに自動生成される)カードゲームである、「神魔狩りのツクヨミ」だ。

神魔狩りのツクヨミ©COLOPL, Inc.

 プレイヤーがゲーム内で選んだイベントの選択肢や行動についてのデータから、AIカネコがゲーム内で敵との戦いに使えるオリジナルカードを生成する。性能と絵柄、名称がその場で生成されるため、遊び方によって唯一無二のカードが得られるのだ。

プレイ画像(1)©COLOPL, Inc.
プレイ画像(2)©COLOPL, Inc.

 AIカネコは、2023年にコロプラに入社した金子氏が描いた絵をAIに学習させ、そこから数万枚の画像を出力。その中から人の目でフィルタリングを行い、良いものを選定してさらに再学習させ、画風とスタイルの調整を行って作り上げた。

 さらに、SNS上で自分が生成したカードを投稿し、他のユーザーが好みのカードに投票できるシステムもある。高評価を得たカードを金子氏が選び、ゲーム内で他のユーザーも共通で使うことができるカードに昇格させる、という仕掛けもある。

 AIとクリエーティブという組み合わせは、ここのところもっぱらネガティブな文脈で語られることが多かった。米OpenAIの新しい映像生成アプリであるSora2が、日本のアニメやゲームなどの知的財産を無断で大量に学習し、当初はほぼ無制限で出力を可能にしたことは日本中から激しい非難を受けた。AIに自らの著作物を学習させたくないというクリエイターも多く、AIでなんらかのクリエーティブ作品を作る行為に対しても、一般的にはあまり受容されているとは言い難いのが現状だ。

 しかし、上記の神魔狩りのツクヨミのように、AIでなければ実現不可能なゲームも登場した。これまでに、プレイヤーが生成したオリジナルカードは数十万枚に上る。金子氏も「自分の発想では描かない、アート的な表現がAIで出力された」と驚いていたという。

 企業が事業としてクリエーティブを手掛ける場合、AIとどう向き合うべきなのか。どのような目的でAIを使い、どうリスクを回避しているのか。電通ではなんと、広告代理店のコアコンピタンスでもある、ベテランクリエイターの知見を注ぎ込んだAIアートディレクターが、すでに広告制作の現場で活躍しているという。次ページから詳しく見ていこう。