ビジネスの現場では、たった1回の失敗で「もうムリ」と思う人と、思わない人がいる。その差は一体どこにあるのだろうか? 佐藤優氏が「極限を生き抜いた夫婦の悲哀を描いた傑作! 危機を脱するのに必要なのは希望と愛だ」と絶賛している全米ベストセラー『極限の漂流118日間』をもとに、「たった1回の失敗で『もうムリ』と思ってしまう人の特徴」をライター照宮遼子氏がレポートする。(構成/ダイヤモンド社・寺田庸二)

たった1回の失敗で「もうムリ」と思ってしまう人Photo: Adobe Stock

「あと3か月」と耐え抜いていた日々

 以前、職場で体臭がきつい人が近くにいた。さすがにキツく、上司に席替えを依頼した。
 けれど、「何もない時期に席を替えるのは体裁が悪いから次の異動まで待ってほしい」と言われた。

 そのころは、人間関係でも仕事でも、すでに限界に近かった。
 それでも、「あと3か月で席替え」と思えば、何とか持ちこたえられた。
 席が離れれば、少しはラクになる。その期待だけを支えに、異動の時期を待った。

 ところが、異動の時期になっても誰も動かず、結局席替えもなくなった。
 その瞬間、ぎりぎり保っていた気持ちがプツンと切れた。

たった1回の失敗で「もうムリ」と思う人、思わない人

「小説のような最高のノンフィクションだ。ページをめくる手が止まらない!」とUSAトゥデイが絶賛している『極限の漂流118日間』(ソフィー・エルムハースト著/村井章子訳)には、助かると確信した直後、その期待が打ち砕かれるシーンがある。

船だ! すぐそこにいる。二キロと離れていない。(中略)
もう助かる。マラリンは発炎信号筒の準備をした。(中略)
船は停まる気配もなく着々と進んでいく。おそろしい無力感がふたりを包んだ。
あんなに近くにいるというのに、彼らはこちらの存在に気づきもしない。

――『極限の漂流118日間』より

 発炎筒は4本使った。
 1本目は不発に終わり、残りの3本を使っても船は気づいてくれなかった。
 妻のマラリンは、早朝で乗組員が船室にいたため見えなかっただけで、次の船なら気づくと考えた。

 その一方で、「あんなに希望でいっぱいだったのに」という衝撃の告白も書き残している。

 期待が外れた直後ほど、人は一度の結果から先のことまで決めつけてしまう。
 けれど、通り過ぎたのは一隻の船であって、これから出会うすべての船ではない。

 マラリンがすごいのは、今回気づいてもらえなかったからといって、この先も同じだとは考えなかったことだ。

期待したことまで間違いにしなくていい

 期待が外れると、「最初から期待しなければよかった」と思う。
 けれど、その期待感があったからこそ、苦しい時間を何とか越えられることもある。
 望んだ結果にならなかったからといって、希望を持ったこと自体が間違いだったわけではない。

 本書は、極限の海で起きた出来事だけでなく、大きな期待が失望に変わったときの心の動きまで描いている。
 この本を読むまで私は、待ち望んだ結果が得られないと「もう何も期待できない」と落ち込んでいることが多かったが、これからは改めようと思った。